死刑執行の再開に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明

本日、東京、広島、福岡の各拘置所において、それぞれ1名に対する死刑の執行が行われた。極めて遺憾な事態であり、死刑執行の再開について強く抗議する。


当連合会は、本年2月24日、野田内閣総理大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始することを求める要請書」を提出し、さらに同年2月27日、小川法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要請書」を提出して、国に対し、直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止することを改めて求めたところである。


死刑の廃止は国際的な趨勢であり、日本政府は、国連関係機関からも繰り返し、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう勧告を受けている。また、本年2月には、欧州議会が小川法務大臣を名指しして死刑の執行を行わないよう求める決議を採択していた。そのような中で、全社会的な議論が尽くされるどころかその方針も立てられず、また議論の前提となる情報も提供されないまま、死刑の執行が再開されたことになる。


近時、法務省内部で行われてきた「死刑の在り方についての勉強会」が終了し、その報告書が公表されたが、これでは死刑廃止についての全社会的議論がなされたとは到底言えず、今回の執行はむしろ全社会的議論を封じるものと言わざるを得ない。


今こそ、死刑の執行を停止した上で、政府が中心となって、死刑に関する情報を広く国民に公開し、国会に死刑問題調査会を設置し、法務省に有識者会議を設置する等の方策をとることによって広く国民的な議論を行うべきである。


よって、当連合会は、死刑執行の再開に対し強く抗議するとともに、死刑執行を停止し、死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。

 

2012年(平成24年)3月29日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児