日弁連新聞 第539号

少年法の適用年齢引下げに反対するシンポジウム
少年法適用年齢引下げには反対です!
11月6日 弁護士会館

法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会(以下「法制審部会」)は、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることの是非について本格的な議論を開始した。議論の中では18歳・19歳の「若年者に対する新たな処分」も検討されているが、現行少年法の下での処遇には遠く及ばない。法制審部会における最新の議論を踏まえ、適用年齢引下げの問題を広く訴えるため緊急シンポジウムを開催した。 
(共催:関東弁護士会連合会・東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会)



法制審部会の議論状況

総括する武内謙治教授子どもの権利委員会の山﨑健一幹事(神奈川県/法制審部会委員)は法制審部会の議論状況として、現行少年法の手続や処分が有効に機能していることは共通認識であること、適用年齢引下げは専ら民法の成年年齢引下げとの関係で「国法上の統一」を図るべきとの観点から議論されていることを説明した。山﨑幹事は、「国法上の統一」を理由に適用年齢を引き下げる必要性は乏しく、18歳・19歳を少年法の適用対象外としながら「若年者に対する新たな処分」を設ける意味は見いだせない、法制審部会の委員として歴史の評価に耐え得る議論をしていきたいと力強く決意を表明した。


少年への効果的な働き掛けはできている

リレートークでは現行少年法の下での処遇を評価する声が多く上がった。少年院の入所経験がある竹中ゆきはる氏は、現在は協力雇用主や保護司として非行少年の更生に関わっていることを、西鉄高速バスジャック事件被害者の山口由美子氏は、少年院で非行少年は変わることができるとの思いに至るまでの経緯をそれぞれ語った。 山下純司教授(学習院大学)は、民法学者の立場から民法の成年年齢引下げとの法改正の目的の違いを指摘した。伊藤由紀夫氏(元家庭裁判所調査官)が、18歳・19歳が少年法の適用対象外になり家庭裁判所の調査という重要な教育的措置の機会が失われることに対して強い懸念を示すと、菱田律子講師(龍谷大学矯正保護課程/元浪速少年院長)は、18歳・19歳の非行少年の更生にとって少年鑑別所や少年院が重要な役割を果たしていることを具体例を挙げて訴えた。


少年法と民法の成年は異なる

武内謙治教授(九州大学)は、「若年者に対する新たな処分」は少年の健全育成の理念とは相いれず問題であると強調した。その上で、「民法上の成年は少年法・刑事法上も成人として扱うべき」との前提自体が誤っていると総括した。



交通事故刑事弁護士費用保険(特約)が発売されます

2019年1月、損害保険ジャパン日本興亜株式会社から交通事故刑事弁護士費用保険(特約)が発売される予定です。この特約により、危険運転致死傷罪などの故意・重過失がある場合を除く交通事故事案において、法律相談費用は、対人事故全般を対象として10万円まで、着手金・報酬金・日当・交通費等実費は、①逮捕された場合、②被害者が死亡した場合、③起訴されて公判請求された場合(略式命令請求は対象外)を対象として上限150万円まで保険金が支払われます(上限を超える弁護士費用は依頼者の個人負担)。
保険加入者は、私選の弁護士費用の一部が補償されますので、交通事故の刑事事件を私選で受任する場合には、保険加入の有無を確認するようにしてください。
また、国選弁護についても、被告人の負担とされた国選弁護費用や一定枚数以上の謄写費用、必要と判断される私的鑑定費用などの訴訟費用が保険金の支払い対象となります。
現在、日弁連から各弁護士会に対し、モデル細則などを提供してリーガル・アクセス・センターの紹介名簿の整備等の準備を依頼しています。
なお、着手金・報酬金の限度額は以下の表のとおりです。


<着手金>

弁護士に委任する内容 限度額
① 少年事件の場合 20万円
② 被保険者が起訴等をされる前に委任した場合
③ 被保険者が起訴等をされた後に委任した場合 30万円


<報酬金>

刑事事件等の結果 限度額
①起訴前 ア.不起訴 20万円
イ.求略式命令 10万円
②起訴後 ア.無罪 60万円
イ.罰金刑より重い刑を求刑された場合で、罰金刑に軽減されたとき 40万円
ウ.刑の執行猶予 30万円
エ.(イ.およびウ.以外の場合で)求刑された刑から8割未満に軽減されたとき 30万円
オ.(イ.からエ.まで以外の場合で)求刑された刑から軽減されたとき 20万円
カ.検察官上告が棄却されたとき 30万円

 ※着手金・報酬金以外にも、接見日当その他日当、実費が保険金支払いの対象となります。



特別養子制度の見直しに関する検討状況
法制審議会特別養子制度部会中間試案と日弁連の対応

法制審議会特別養子制度部会(以下「法制審部会」)は、本年6月以降、深刻化している子ども虐待対応等における特別養子制度の利用促進の観点から、民法の特別養子に関する規定等の見直しに向けた議論を行い、10月9日に「特別養子制度の見直しに関する中間試案」(以下「中間試案」)を取りまとめた。


中間試案は、①養子となる者の年齢引上げ等、②特別養子縁組の成立に関する規律の見直しの二点を挙げている。②については、児童相談所長の手続参加、実親による同意撤回の制限のほか、特別養子縁組成立に係る規律の見直しとして、審判手続を養子適格と縁組成立の審判の2段階構造とし、各段階について1個または2個(別個)の申立てによる事件とする方策、成立要件は変更せず従前の審判手続において中間決定を利用する方策などが示された。
日弁連は、本年10月23日付けでarrow_blue_2.gif「特別養子縁組制度の改正に関する提言」を取りまとめ、①養子となる者の上限年齢を引き上げるべきであるが、具体的年齢は特別養子縁組の性質等を考慮すべき、②養親となる者と実親との対立回避等の観点から、審判手続を二分し、実親の監護等に関する第1段階の審理については児童相談所長が申立人となるなど手続に関与できるようにし、第2段階では養親候補者の適格性に関する審理を行う構造にすべきであるとした。さらに、③実親による同意撤回を制限すべきであるが、裁判手続前の同意とその手続機関および撤回制限効が生じる期限の適切な検討を要し、④実親が同意できる地位を濫用してはならないことを明記すべきであるとした。また、日弁連は本年11月1日、提言の趣旨を踏まえた中間試案に対する意見を法務省に提出し、公表した。
今後は、中間試案に対するパブリックコメントの結果等も踏まえ、2019年1月頃には法制審部会が議論を取りまとめ、その後の通常国会において法改正が進む可能性があり、引き続き動向を注視する必要がある。


(法制審議会特別養子制度部会バックアップ会議 委員 柿崎博昭)



ひまわり

11月8日、暖かさが残る秋空の下、秋の叙勲等の伝達式・謁見が行われた▼日弁連は同日夕刻、弁護士会員の受章者とその同伴配偶者をお招きしてささやかな祝賀会を催行した。受章者と同伴配偶者は、早朝から長丁場の行事の後のためお疲れの様子ではあったが、晴れやかな笑顔で来場されたことが印象深い▼出席された受章者全員から受章のご挨拶をいただき、各自が弁護士として長年にわたり取り組んできた活動や思い出の出来事などを語っていただいた。ユーモアを交え、謙遜されたお話しぶりの中に垣間見える弁護士としての気概や自負に圧倒された。先輩弁護士たちの献身的な活躍の下にいまの社会があることを改めて感じた。叙勲の栄誉に浴することを目標として活動した方は誰一人としていなかったと思うが、献身的な活動をこうして評価する機会があることはとても意義深い▼世の中には、社会のため社会的な弱者のための活動に取り組む人が数多くいる。さらに言えば、人のために社会のためにと殊更に意識せずとも自然に他人を幸せにする言動は数多い。小さなことであっても適正に評価し、感謝の念を形にすることの大切さを思い出させられた。まずは、私の配偶者の日々の所作に感謝し、言葉にすることから始めたい。     

(K・O)



「えん罪を防止するための刑事司法改革グランドデザイン」を策定

国が、罪を犯していない人に犯罪の嫌疑をかけ、その生命や自由を奪うことは重大な人権侵害であり、えん罪の防止は、刑事司法の最も重要な課題である。しかし、日本の刑事司法において、えん罪の防止が十分に図られてきたと言うことはできない。
日弁連は、えん罪の防止のために、さまざまな意見を取りまとめ、公表してきたが、その全体構想を示すことを目的として、10月23日にarrow_blue_2.gif「えん罪を防止するための刑事司法改革グランドデザイン」(以下「グランドデザイン」)を策定した。
グランドデザインでは、現行の日本の刑事司法の下で、罪を犯していない人が犯罪の嫌疑をかけられたときに経験することとなる手続の流れ(捜査機関による取調べ、逮捕、被疑者勾留、起訴、被告人勾留と保釈、第一審、控訴・上告、再審)に沿って、各場面の問題点と、それに関する日弁連の意見の概要を明らかにしている。
えん罪を防止するための刑事司法改革は継続を要する作業である。日弁連は、今後も、刑事司法の現場で発生している問題点を把握し、それを改善するための意見を取りまとめ、公表していくことになる。グランドデザインも、それに応じて改訂を重ねることを予定している。

(刑事調査室室長 河津博史)

◇    ◇


*グランドデザインは、日弁連ウェブサイト(HOME≫日弁連の活動≫会長声明・意見書等≫意見書等≫year≫2018年≫arrow_blue_2.gifえん罪を防止するための刑事司法改革グランドデザイン)でご覧いただけます。




日弁連短信

民事裁判の未来予想図


大坪和敏事務次長近年は、音声認識技術や画像処理技術などのAI技術が発達し、AIにより、あたかもSFの世界で描かれる脅威が現実のものとなるかのようである。弁護士業務への影響も取り沙汰され、「自由と正義」(2017年9月号)をはじめ、多くの法律雑誌で特集が組まれている。もっとも、現時点で真の意味でのAI(=人工知能)は存在せず、近い将来開発される見込みもない。AI技術によって業務の効率化が図れても、計算機にすぎないAIが、遠い未来はともかく、近い未来に弁護士の業務を代替することはない。今のところ日弁連にAIの問題を扱う組織がないのはそのような理由と思われる。
民事裁判手続のIT化の議論が進む中、日弁連でも新たにワーキンググループを設置して、弁護士会・関連委員会から寄せられた意見の取りまとめ作業が行われている。
裁判のIT化で議論されているのは、遠い未来の話ではなく、近い未来である。想定されている手続ではオンラインで電子化された訴状、附属書類を提出し、費用は電子納付される。争点整理・人証調べは、ウェブ会議で、双方当事者が裁判所に出頭できない場合でも実施することができる。遠隔地の裁判所に行くことを理由として次回期日が容易に入らないということは少なくなる。オンラインによる訴状提出により、提出時に裁判所の受付窓口に並ぶ必要もなくなる。不必要な事務作業や時間を省力化することで、より充実した審理が期待できる。高画質モニターで臨場感ある手続も見込まれる。
今回のIT化の検討では、土地管轄や裁判所の事務分配の見直し、支部の統廃合は予定されていない。支部の統廃合のおそれを理由としてIT化に慎重な意見も存在するが、支部の統廃合は人口動態によるところが大きく、IT化と直接関係するものではない。
訴状提出に関連して、日弁連は、弁護士向け電子証明書の導入に向けての検討も始めている。登記その他の各種証明書の申請、税務申告に利用することが想定されるが、どこまで利用範囲を広げることができるかが課題である。
日弁連内外から民事司法改革が求められている。証拠収集の拡充などについて最高裁・法務省との協議も始まっている。技術や制度が進歩しても、実際に使う側の意識が変わらなければ、改革は実現しない。IT化の議論を契機にして、各地の実務の工夫・ニーズを制度改革に取り入れるべく、多くの会員から民事裁判の改革に向けたご協力を賜りたい。


(事務次長 大坪和敏)


松橋事件 再審開始確定

いわゆる松橋事件の再審請求審で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は10月10日、福岡高裁がした即時抗告棄却決定に対する検察の特別抗告を「判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法433条の抗告理由に当たらない」として、裁判官全員一致で棄却した。熊本地裁の再審開始決定が確定し、再審公判が始まる。
松橋事件とは、1985年1月に熊本県松橋町(現宇城市)で男性が刺殺された事件である。事件後、宮田浩喜氏が逮捕・起訴された。宮田氏は一時犯行を自白したが、公判で否認に転じ無実を訴えてきた。有罪の決め手は、小刀に布を巻き付け刺殺した、布は燃やしたとの自白だった。だが再審請求の準備中、焼失したはずの布が証拠開示された。検察は布の存在を知っていたが、確定審でその存在を明かさず、再審開始まで33年もの年月を要した。
この間、宮田氏の長男は父の無実の罪を晴らせぬまま亡くなり、宮田氏も病を患い予断を許さない状況にある。検察は特別抗告したにもかかわらず、最高裁で何ら補充立証できなかった。特別抗告棄却は当然であり、特別抗告は再審開始の引き延ばしにしかならなかった。
本件は、燃やしたはずの布が発見されたこともあり再審開始に至ったが、証拠開示がなければ再審の扉は開かなかったかもしれない。再審請求審における証拠開示規定はない。再審請求審における証拠開示の法制化が必須である。


(松橋事件弁護団  益子 覚)



超高齢社会における高齢者・障がい者の司法アクセスに関するニーズ調査報告会
11月1日 弁護士会館

本年10月に「超高齢社会における高齢者・障がい者の司法アクセスに関するニーズ調査報告書」が完成した。これを受け、高齢者・障がい者(以下「高齢者等」)の司法アクセス改善に向けた課題や方策について検討した。


パネルディスカッションでは司法と福祉の連携の重要性が指摘された総合法律支援本部超高齢社会における高齢者・障がい者の司法アクセスに関するニーズ調査チームの池永知樹座長(埼玉)が、調査報告書の概要を説明した。被支援者本人が問題を認識していても、そのうち約4割が他人の助けを求めたがらないとの理由で被支援者自身から問題を顕在化させていないことを指摘した。その上で、高齢者等の司法アクセスに関する課題として、潜在ニーズの顕在化に向けた環境整備、環境整備に向けた日弁連の取り組みを挙げた。
佐藤岩夫教授(東京大学社会科学研究所長)は基調講演で、法的ニーズを顕在化させ弁護士につなぐためには、ヘルパーやケアマネジャー等の一次接触者は弁護士との日常的な接触や研修等が難しい面があることから、二次接触者である地域包括支援センター等の法的ニーズへの感受性を磨くことが有用であると説いた。
パネルディスカッションで、志賀美穂子氏(墨田区いきいきプラザ館長/社会福祉士/主任ケアマネジャー)は、弁護士は高齢者等をその周辺事情から切り離して捉えるのではなく、司法と福祉の連携を意識して対応してほしいと訴えた。
能重早苗氏(新宿区福祉部高齢者支援課)は、福祉の現場にはさまざまな専門家がおり、弁護士にも、チームとして互いの役割を尊重しながら協働する姿勢が求められると語った。
日弁連高齢者・障害者権利支援センターの矢野和雄事務局長(総合法律支援本部事務局次長/愛知県)は、地域包括支援センターとの連携の仕方について、定期的に弁護士が地域包括支援センターに赴き、相談できる環境を整えることが肝要であると述べた。




第20回
犯罪被害者支援全国経験交流集会
11月9日 東京都中央区

本年4月、新たに見直された犯罪被害給付制度(以下「新制度」)の運用が始まった。犯罪被害者支援活動の活性化につなげるべく、改めて犯罪被害者に対する経済的支援について考察を深めるとともに、情報の交換・共有を図った。(共催:東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会)


基調講演をする藤本氏集会の冒頭、藤本護氏(犯罪被害補償を求める会代表)が「犯罪被害者補償の現状と課題」と題する基調講演を行い、犯罪被害を受けた者が元の生活に戻るために経済的補償を受けるのは国民としての権利であると訴えた。
続いて3人の弁護士が、犯罪被害者支援の実例について、被害回復のために工夫した点などに言及しながら報告した。さらに、本年6月から8月にかけて実施された、各弁護士会の犯罪被害者支援に関する委員会の委員等を主な対象とした「損害賠償請求に係る債務名義の実効性に関するアンケート調査」の結果が報告され、被害回復が困難な現状が浮き彫りになった。
パネルディスカッションでは、佐藤真奈美氏(公益社団法人被害者支援都民センター相談員)が、被害者は被害回復を強く求める気持ちの一方で損害賠償請求や示談に対する迷いや負担感を抱えていると指摘し、支援制度の在り方について問題を提起した。奥田暁宏氏(警視庁総務部企画課犯罪被害者支援室・警部)からは、重傷病給付金の給付期間の1年から3年への延長や幼い遺児がいる場合の遺族給付金の増額など新制度の概要について説明があった。齋藤実会員(東京/獨協大学法学部特任教授)は、ノルウェーでは暴力犯罪補償庁が、スウェーデンでは犯罪被害者庁が犯罪被害者支援を一元的に担っており、被害者に対する補償金の支給と加害者に対する求償を行う制度がよく機能していると説明した。藤本氏は、日本でも加害者の損害賠償債務を国が被害者に立替払いし加害者に求償する制度の実現が不可欠であると改めて強調した。



成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会(第7回)
中核機関における申立支援の在り方と課題
10月11日 弁護士会館

日弁連では、成年後見制度の改善・改革に向けて、福祉の専門家等を講師として招き、連続学習会を開催している。第7回目となる今回は、中核機関における後見等の申立支援をテーマに取り上げ、その在り方と課題について議論した。
当日は、弁護士、社会福祉士等の専門職、関係団体の担当者のみならず、一般市民も含む約160人が参加した。


川井誉久氏(東京都社会福祉協議会(以下「東社協」)地域福祉部)が、「東京における成年後見制度の適切な運用と利用の促進に向けた地域と家庭裁判所の連携による取組について」(東社協試案)をもとに申立支援の在り方と課題について基調報告をした。
2005年に事業開始した成年後見活用あんしん生活創造事業における成年後見制度推進機関は、親族後見人受任後の支援が十分にできなかったこと、財産管理や不正防止を過度に重視するあまり、親族の意にそぐわない専門職後見人が選任された事案が少なくなく、制度への不満、専門職後見人とのあつれきを招いたことなど問題点を挙げた。
パネルディスカッションの様子 東社協試案は、これらの問題点を踏まえ、利用者の適切な意思決定支援ときめ細かな身上保護を重視すべく、家裁や専門職と連携・協働して後見(支援)プランを作成し、適切な後見人の選任と選任後の的確な後見人支援につなげようとしていると説明した。
安藤亨氏(豊田市福祉総合相談課)は豊田市の状況に関する基調報告の中で、豊田市が2017年7月に成年後見支援センターを開設したところ、成年後見制度利用者が2016年に比べて84人増加して398人になったと報告した。また豊田市では、政策的な部分を担う自治体と現場対応を担う支援センターが分担して中核機関の役割を担っていると説明した。
続いて、日弁連高齢者・障害者権利支援センターの末長宏章委員(札幌)らが加わり、パネルディスカッションが行われ、弁護士や社会福祉士など専門職後見人との連携の重要性や、専門職後見人に期待される役割などについて活発な議論がなされた。



シンポジウム
すべての戸建住宅に構造計算を!
安全な住宅に居住する権利の実現を求めて
10月18日 弁護士会館

建築基準法20条1項4号の建築物(以下「4号建築物」)は、木造2階建て以下の戸建住宅など小規模建築物であり、構造計算が免除され、構造審査も省略される特例が認められている。しかし、この特例こそが建物の安全性を脅かす。大規模地震に備え、安全な住宅に居住する権利を実現するため、課題やその克服方法を議論した。


消費者問題対策委員会の神㟢哲幹事(京都)は基調報告で、日弁連が本年3月、「4号建築物に対する法規制の是正を求める意見書」を取りまとめ、4号建築物について、①構造計算を義務付けること、②構造計算以外の構造安全性確認方法を残すならば、構造計算を行った場合と同等以上の構造安全性を確保できるようにすること、③建築確認手続における構造審査・検査の省略の特例を撤廃することを提言したと報告した。
村上淳史氏(村上木構造デザイン室代表/一級建築士)は、木造軸組住宅の9割がプレカットを利用しているが、プレカット工場で加工された物件から無作為に100物件を抽出して構造計算を行った結果、全物件でエラーが出たという衝撃的な報告を行った。
深井敦夫氏(国土交通省住宅局建築指導課建築物防災対策室長)は、構造計算書偽装問題後の2007年に建築確認・検査を厳格化する改正建築基準法が施行された際、住宅着工件数が急激に減少した反省から、国土交通省としては、4号建築物の確認・検査の拙速な厳格化は適切ではないと考えていると説明した。
パネルディスカッションで、五十田博教授(京都大学生存圏研究所)は、構造計算をすることで住宅欠陥が回避されるケースも想定されるが、構造計算は万能ではなく、それだけで全ての欠陥が解消されるわけではないと釘を刺した。
蟹澤宏剛教授(芝浦工業大学建築学部建築学科)は、現在はプレカット工場の役割が極めて大きいが、法はプレカットを前提としていないと述べ、プレカット工場の役割について明確な法規制を定める必要があるとの見解を示した。



シンポジウム
死刑廃止の実現を考える日
10月23日 弁護士会館

日弁連は2008年から毎年、死刑をテーマにしたシンポジウムを開催している。今回は、オウム事件死刑確定者13人全員の死刑執行で国内外に広がった波紋を検証し、2020年までの死刑廃止の可能性について議論した。
(共催:東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会・関東弁護士会連合会)


ポール・マデン氏(駐日英国大使)が、死刑に反対する英国の立場を改めて強調し、英国が2004年に死刑を廃止した経緯を説明した。マデン氏は、死刑廃止に関する議論を活性化させるとともに被害者に寄り添う姿勢を忘れてはならず、被害者支援体制を構築する必要があると述べた。
フランチェスコ・フィニ氏(駐日欧州連合代表部公使)は、死刑執行では被害者遺族の悲しみは癒えず、死刑の犯罪抑止力にも疑問があると述べ、日本における死刑廃止に向けた取り組みに協力すると述べた。
死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部の木村保夫副本部長(神奈川県)は、オウム事件死刑確定者の死刑執行について、13人もの大量執行となった点、選挙速報さながらの報道がされた点のほか、死刑囚の多くが再審請求中であった点、心神喪失状態である疑いが強かった死刑囚に対して精神鑑定による客観的な判定を経ずに執行した点を問題として指摘した。
会場に駆けつけた川田龍平参議院議員(立憲民主党)は、命が最優先される社会を目指すために死刑制度の廃止についても取り組んでいきたいと語った。また、前衆議院議員の漆原良夫氏は、現在国会では死刑に関して活発な議論はなされていないが、超党派の議員連盟を立ち上げてしっかり議論していくと力を込めた。
萱野稔人教授(津田塾大学)は「死刑廃止を哲学する」と題して基調講演を行い、死刑廃止の是非についてカントの道徳哲学から検証するなど哲学的考察をした。その後、伊藤智永氏(毎日新聞編集委員兼論説委員)、足立修一副本部長(広島)が加わりトークセッションを行った。伊藤氏は、オウム事件死刑確定者の死刑執行で広がった波紋について、自身のコラムにたくさんの反応が寄せられたことを受け、多くの国民が死刑の問題を考えたがっているのではないかと推測した。足立副本部長は、世論の関心が死刑に向いたものの、死刑廃止の議論に直接結び付いてはいないため、積極的に議論を呼びかけたいと語った。



第59回「法の日」週間記念行事 法の日フェスタ
霞が関司法探検スタンプラリー
10月15日 東京都千代田区

最高裁、法務省および日弁連は、10月1日の「法の日」から1週間を「法の日」週間として、市民に法を身近に感じてもらうために法の日フェスタを開催している。日弁連は今年も霞が関司法探検スタンプラリーを実施し、幅広い世代の市民の参加を得た。
(主催:「法の日」週間実施東京地方委員会(東京高地家裁・東京高地検・法テラス東京・関弁連・東京三会・日弁連))


弁護士会の見学

日弁連広報キャラクターのジャフバが参加者を出迎えた。引率担当の3人の弁護士とともに新人弁護士の成長を題材にしたPR動画を視聴した後、弁護士の業務や弁護士会の果たす役割等についての説明を聞いた。


検察庁の見学

検察官から刑事手続の進み方について説明を受けた後、模擬取調室を見学した。参加者は展示された手錠や防弾チョッキに実際に触れたり、取調べの様子を撮影するためのカメラの位置を確認したりすることができた。


裁判所の見学

裁判員裁判で使用する法廷を見学した。法廷内では、写真撮影や法服の試着のほか、裁判官から裁判の説明を受けた。少年審判廷を見学した後、家事調停の手続の流れについて説明を受けた。


法テラスの説明

最後に法テラスから、資力のない人でも弁護士等の援助が受けられる法テラスの制度についての説明を聞き、スタンプラリーを終えた。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.138

自転車ADRセンターを訪ねて


自転車には自賠責保険のような強制加入の保険がなく、事故が発生した場合の賠償システムも整備されていないため、事故対応に多大な労力を費やすことがあります。そのような中、自転車ADRセンター(以下「センター」)がどのような役割を果たしているのか、センター長の田中栄作氏、利用相談員の山口文知氏にお話を伺いました。

(広報室嘱託 柗田由貴)

 

センター設置の経緯

(田中)センターがある東京都品川区の自転車総合ビルには、私が常務理事を務める一般財団法人日本自転車普及協会(以下「協会」)をはじめ、自転車関連の各種団体が入居しています。自転車事故の被害者は高年齢層と低年齢層に二極化しつつあり、ここに一石を投じることができないか、日々悩んでいました。そこで、協会を中心に8団体が集まり、自転車事故への適切な対応が、自転車を活用した豊かな生活につながるという思いの下、2013年2月に法務大臣の認証を受けてセンターを設置しました。


手続の概要

(山口)まず、利用相談員が電話で事故の概要を聴取し、面談日時を設定します。面談では事故の詳細を聞き、事案や争点を整理するとともに、申立手続について説明します。その後、申立書類が提出され、申立手数料5000円(税別)が納付されると、事故の相手方に連絡し、相手方が応じることとなった場合に調停が開始されます。調停は1回当たり1〜2時間で、平均すると2〜3回の期日で終了します。調停が成立すると、経済的利益の額に従い、和解成立手数料を納めていただきます。
事件を担当する3人の調停委員はいずれも弁護士で、センターに登録する6人の弁護士がローテーションであたっています。他方、申立人・相手方の弁護士が立ち会うのは調停の段階以降で、相談の段階までは本人が対応することが通常です。


センターの特徴

自転車総合ビル1階にある自転車文化センターのライブラリーでは、自転車に関するさまざまな書籍等を閲覧できる(山口)事案と争点をしっかり把握するため、面談でじっくり話を聞くよう心掛けています。面談で争点を整理すると、大半が金額・過失割合・謝罪の問題に帰着するのですが、利用相談員や調停委員が話を続けていくうちに、相談者が落ち着きを取り戻し、最終的に謝罪の問題は取り下げとなることが多いです。


(田中)過失割合にこだわらないのも、センターの特徴です。調停委員は、頭の中では過失割合を考えていると思いますが、あえて触れず、過失割合の問題を顕在化させません。過失割合に拘泥することなく、「この金額でいかがですか」と提示するのです。
また、利用相談員と調停委員は自転車好きの集まりですので、事故のために自転車を嫌いにならないでほしいという強い思いもあります。しかも、調停委員全員が弁護士であることが、手続の中立・公正を担保し、利用者の安心感を醸成しています。これらの要素がうまく噛み合って、調停が成立する割合が高くなっているのだと思います。


センターの課題

(山口)私もセンターの利用相談員だけではなく、協会の主任調査役を務めています。センターに専門職がいるわけではなく、マンパワーに限界があります。収支を度外視して運営していることや、調停の場所が自転車総合ビルに限定されていること等もあり、対応力に制限があることが課題です。


センターの展望

センター長の田中氏(左)と利用相談員の山口氏 (田中)センターを設置した理由の一つに、事故当事者の生の声を聞いて、事故を予防するための注意喚起や啓発活動を一層充実させたいという思いがあります。講習会やインターネットにおけるこれらの活動を今後も積極的に展開していきたいです。


弁護士・弁護士会へのメッセージ

(田中)交通事故に特化した弁護士はいても、自転車事故に特化した弁護士はいないのが実情であり、自転車事故の賠償システムはまだまだ整備途上です。この賠償システムを確立し、問題を早期に解決するためにも、皆さんと常日頃から情報交換を行い、協力関係を築いていくことができればと思います。


(山口)自転車総合ビルの1階にはライブラリーがあり、国内外の自転車に関する専門誌や書籍を閲覧することができます。また、事件によっては、協会その他自転車関連の団体がお役に立てる場合もあるかもしれません。ぜひ積極的にご活用ください。




日弁連委員会めぐり97
児童相談所における弁護士配置への対応に関するワーキンググループ

今回の委員会めぐりは、児童相談所における弁護士配置への対応に関するワーキンググループ(以下「WG」)です。児童福祉法が2016年5月に改正され、12条3項に都道府県が児童相談所(以下「児相」)における弁護士の配置またはこれに準ずる措置を行う旨が規定されました。WGの活動内容等について、高橋聖明座長(長野県)、水地啓子副座長(神奈川県)、磯谷文明委員(東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 木南麻浦)


WG設置の経緯左から磯谷委員、高橋座長、水地副座長

2016年4月、児童福祉法改正に向けた動きが加速する中、児相への弁護士配置の現状把握、日弁連としての対応策の検討、弁護士会のとるべき態勢の検討、児相に配置される弁護士のバックアップ等を目的として設立されました。
メンバーは子どもの権利委員会と法律サービス展開本部を主たる推薦母体として選出されています。


WGの活動内容

初年度は、全国訪問やアンケート調査等による児相への弁護士配置の現状把握と、収集した情報の弁護士会との共有に務めました。
その後は、子どもの権利委員会において、児相に関わる弁護士向けのeラーニング講座「児童虐待問題に対する法的対応の実務」(日弁連総合研修サイトで公開中)、自治体向けのパンフレット「すべての児相に弁護士を」(日弁連ウェブサイトに掲載中)の作成に取り組みました。
WGの活動の集大成として、児相に関わる各地の弁護士による座談会を開催し、その知識や経験を集約する予定です。


高まるニーズ

これまでも全国の児相と弁護士は、主として非常勤弁護士の配置や顧問契約等の契約関係に基づいて連携を強めてきました。このことが、児相への弁護士配置が欠かせないとの認識を高め、今般の法改正につながったと思います。
2016年4月1日時点で常勤4人・非常勤47人の弁護士が全国の児相に配置されていましたが、弁護士会をはじめとする関係者の努力により、本年4月1日時点では常勤9人・非常勤136人が配置されるまでになりました。
今後も児相と弁護士の連携がますます深まるよう、十分なバックアップをしていきたいと考えています。


会員へのメッセージ

児相における仕事は、家族、行政、国籍、在留資格等のさまざまな問題が複雑に関わる法的にも大変興味深い分野です。
子どもの権利の擁護に少しでも関心がある会員には、常勤・非常勤を問わず、児相に積極的に関わっていただきたいと思っています。




ブックセンターベストセラー
(2018年9月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名・発行元名
1 インターネット関係仮処分の実務 関述之・小川直人 編著 きんざい
2 携帯実務六法2018年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
3 後遺障害入門−認定から訴訟まで− 小松初男・小林覚・西本邦男 編 青林書院
4 相続法改正のポイントと実務への影響 山川一陽・松嶋隆弘 編著 日本加除出版
5 民法[相続法制]改正点と実務への影響 米倉裕樹 著 清文社
6 法務と税務のプロのための改正相続法徹底ガイド 松嶋隆弘 編著 ぎょうせい
量刑調査報告集Ⅴ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
8 弁護士職務便覧−平成30年度版− 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
9 別冊ジュリストNo.240 環境法判例百選[第3版] 大塚直・北村喜宣 編 有斐閣
10 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版] 婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会



海外情報紹介コーナー③
Japan Federation of Bar Associations

弁護士活動を保護する条約


人権問題に取り組む弁護士が、依頼者との通信内容につき秘匿特権や守秘義務の侵害等の脅迫や妨害を受け、活動を十分に保障されない状況が主に東ヨーロッパで広がっている。こうした脅迫や妨害が政府機関等による政策等を通じ組織的に行われ、まん延しつつあることへの懸念が高まり、欧州評議会議員会議は今年1月に「弁護士に関する条約(a convention on the profession of the lawyer)」の起草を求める勧告を採択した。
この条約はヨーロッパ域内での弁護士活動の保護を強化し、その侵害について国家の責任を追及するために重要である。
現在、欧州評議会の関係各委員会宛て意見照会が行われており、欧州弁護士会評議会(CCBE)は早期の起草開始に向け積極的なロビー活動を展開している。

(国際室嘱託 佐藤暁子)