日弁連新聞 第536号

菊地会長らが広島県呉市・岡山県倉敷市を訪問
~平成30年7月豪雨災害~


日弁連の菊地裕太郎会長および太田賢二副会長が8月27日、広島弁護士会および岡山弁護士会の案内で、広島県呉市、岡山県倉敷市の現地視察を行った。



呉市天応地区の土砂災害発生現場を視察

土砂災害発生現場の視察(呉市天応地区) 広島県呉市では、このたびの豪雨災害により、土砂災害による甚大な被害が発生した。
今回の視察では、呉市役所のご厚意により、市内でも被害の大きかった天応地区をご案内いただいた。被災現場では、土石流によって倒壊した家屋や流された車などが今なお残されており、被害の大きさや復旧の困難さを目の当たりにした。その後、行政拠点となっている天応まちづくりセンターを訪問し、発災当時の状況や行政による被災者支援についての説明を受けた。


倉敷市真備地区では会員の自宅も浸水被害に

続いて、大規模な浸水被害により、ほとんどの住民が避難を余儀なくされている岡山県倉敷市真備地区を視察した。同地区では、2階まで浸水被害のあった岡山弁護士会会員の自宅を訪れた。土砂災害とは異なり、一見すると外見から被災していることが分からないが、浸水した家の内部は土壁がはがれ落ち、床や天井がゆがむなどしており、浸水による被害の大きさに一同言葉を失った。なお、これらの被害を受け、倉敷市は同地区の住宅約2100棟を一括して「全壊」と判定しており、住宅再建への動きを進めている。


被災自治体を訪問 副知事・市長と面談

今回の視察では、被災現場の視察のほか、広島県庁、岡山県庁および倉敷市役所を訪問し、広島県の田邉昌彦副知事、岡山県の菊池善信副知事、倉敷市の伊東香織市長と面談した。
浸水した家屋の中の様子(倉敷市真備地区) 菊地会長から、このたびの豪雨災害に対するお見舞いの言葉とともに、今後も日弁連として被災者支援を行っていくとの決意が述べられた。また、太田副会長から、発災から現在に至るまでの日弁連の取り組みを報告し、住家被害認定等の在り方に関する意見書、災害関連死に関する意見書の内容についての説明があった。(意見書は日弁連ウェブサイトに掲載)
田邉副知事、菊池副知事および伊東市長からは、それぞれ発災直後からの弁護士会の支援に対して感謝の意が表され、被災者への情報発信の重要性、弁護士会との連携について述べられた。
日弁連は今後も被災地弁護士会や関係機関と連携し、被災者の目線に立った支援を継続していく。
 

(事務次長 近藤健太)



第29回POLA
(アジア弁護士会会長会議)
8月1日~3日 オーストラリア・キャンベラ


POLAは、毎年1回、アジア太平洋の国と地域の弁護士会や国際法曹団体のトップが一堂に会する会議である。今回は約20の弁護士会や国際法曹団体が参加し、日弁連からは菊地会長が参加した。


ワーキングセッションで報告する菊地会長 会議では、「司法と法曹の独立」「腐敗防止及び透明性」「ビジネスと人権、法曹」「法曹への受け入れと多様性」の4つのテーマに関するワーキングセッションが行われ、参加団体が、いずれかのテーマについてプレゼンテーションを行った。
菊地会長は「ビジネスと人権、法曹」のセッションで、2015年1月に日弁連が発表した「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」の概要や、2016年以降日弁連が政府に求めてきた「ビジネスと人権に関する国別行動計画」の策定に関する状況などについて報告した。
また菊地会長は、ワーキングセッションの合間に、オーストラリア弁護士連合会、マレーシア弁護士会、フィリピン統一弁護士会および大韓弁護士協会のトップらと会合や会食を相次いで行い、弁護士会の在り方や今後の相互交流の可能性などについて協議した。
3日間の会議を締めくくる会長会議では、司法や法曹の独立を脅かす勢力に対し、POLA参加団体が協力して立ち向かうことや、腐敗防止・透明性確保などについて参加団体相互に情報提供することなどを内容とするコミュニケが採択された。また、約30年にわたるPOLAの歴史や成果を1年かけて検証するワーキンググループ(参加6団体により構成)の設置が決議され、日弁連もその一員として検証に加わることになった。
来年のPOLAは中国で開催される予定である。


(国際室嘱託 津田顕一郎)


arrow_blue_2.gif「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」は、日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。


 

法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の議論状況
分科会の検討結果まとまる


昨年3月に始まった標記部会への諮問事項は、⑴少年法における少年の年齢を18歳未満に引き下げることの是非と、⑵非行少年を含む犯罪者に対する処遇の充実である。
これまで⑵に関する論点について3つの分科会で分担して検討されてきたが、分科会での議論を終え、7月26日の第8回部会で「分科会における検討結果(考えられる制度・施策の概要案)」(以下「検討結果」)が報告された。


検討結果では、①起訴猶予等に伴う再犯防止措置の法制化(*)のほか、②刑の全部の執行猶予期間内に更に罪を犯し、猶予の期間内に公訴を提起され、禁錮以上の刑に処せられた場合における執行猶予の言渡しの必要的取消し、③懲役と禁錮を単一化し、刑事施設に拘置して、作業だけではなくその他の矯正に必要な処遇を行うことを内容とする新たな自由刑の創設などが提案されている。また、④罪を犯した18歳・19歳の者で、訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたものについて、家庭裁判所に送致し、現行の少年法類似の手続を経て、処分(保護観察処分のほか施設収容処分も検討されている)を決定する制度の創設も提案されている。
これらの提案にはそれぞれ問題点があり、慎重な議論が求められる。
しかし、成年年齢を引き下げる改正民法が成立したことなどを踏まえ、部会の審議が急ピッチで進められるおそれが出てきた。特に、検討結果で提案されている諸制度の採用により、仮に少年法の適用年齢が引き下げられても、18歳・19歳の者に対する処遇に問題が生じないかのような方向に議論が進むことに警戒する必要がある。
部会に対しては丁寧かつ慎重な審議を求めるとともに、適切な時期に日弁連の意見を表明できるよう、議論や準備を進めたい。
現行少年法の適用年齢の引下げを許してはならない。


(法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会バックアップ会議事務局長 水野英樹)


*日弁連は本年3月、arrow_blue_2.gif「検察官による「起訴猶予に伴う再犯防止措置」の法制化に反対する意見書」を公表した。



日野町事件
再審開始決定


大津地裁は7月11日、日弁連支援事件である日野町事件について再審開始を決定した。
日野町事件は、1984年12月に滋賀県蒲生郡日野町で発生した強盗殺人事件である。発生から3年余経過後に亡阪原弘氏(当時52歳)が逮捕され、自白調書が作成された。
亡阪原氏は、自白を撤回して無実を訴えたが、2000年に上告が棄却され無期懲役が確定した。確定判決は、物的証拠がなく、亡阪原氏と犯人を結び付ける状況証拠もなく、任意性と信用性に疑問のある自白調書しかないという脆弱な証拠に支えられたものであった。
2001年に申し立てた再審請求が棄却され、即時抗告審係属中であった2011年3月に阪原氏は病死し、第1次再審請求の手続は終了した。1年後に亡阪原氏の妻子が申し立てたものが今回の第2次再審請求である。
再審請求審では証拠開示が大きな役割を果たした。第1次再審請求審では、全ての送致書、証拠品目録等が開示され、証拠の一覧表が作成された。第2次再審請求審では、検察官送致前の証拠の開示も進み、引き当たり捜査に関する写真・ネガ、アリバイ捜査資料等が開示された。その中には、引き当たり捜査の任意性に重大な疑問を生じさせる証拠など、再審開始決定を導く重要な証拠も含まれていた。
本決定は、新旧証拠を総合的に判断し、自白の任意性と信用性について合理的疑いがあるとし、間接事実によっても亡阪原氏を犯人であると推認することはできないとした。本決定における総合評価の手法は、最高裁白鳥・財田川決定に沿うものと大いに評価できる。にもかかわらず、検察官は7月17日、大阪高裁に即時抗告をした。
日弁連は、亡阪原氏の再審無罪が確定し、その名誉が回復されるまで、引き続き全力で支援する。


(人権擁護委員会日野町事件委員会委員長 小林 修)



諫早湾干拓事業に関する請求異議訴訟
福岡高裁 原判決を取り消す


福岡高裁は2010年12月6日、判決確定から3年以内に諫早湾干拓事業で設置された南北の排水門を開放(以下「開門」)することなどを国に命じる判決を言い渡し、国が上告せず同判決は確定した。確定判決が開門まで3年間の猶予を認めたのは、干拓地で営農を開始していた農業者等に開門による被害が生じないよう、国に万全の対策を講じさせるためであった。
しかし、国が履行期限である2013年12月20日までに開門しなかったため、確定判決の権利者である漁業者らが国に対する間接強制の申し立てをしたところ、国は請求異議訴訟を提起した。
一審の佐賀地裁では国の請求は棄却されたが、福岡高裁は7月30日、国の控訴を認め、原判決を取り消して確定判決に基づく強制執行を許さないとの判決を言い渡した。福岡高裁は、開門を求める権利(漁業行使権)の前提となる共同漁業権が、2013年8月31日で免許期間終了により消滅していたことが異議事由となると判断したが、同年9月1日以降の共同漁業権は免許期間以外は同内容である。同判決は、漁業者らが従前と同様に共同漁業権の範囲内で漁業を続けている実態を無視した形式的な判断であり、さらには、確定判決が開門を猶予した3年間の期限到来前に強制執行する権利が奪われる論理矛盾についても判断を回避したものである。
このように、福岡高裁が国の開門義務を免れさせる判断をしたのは不合理であり、司法の役割を放棄したものと言わざるを得ない。日弁連は7月30日、arrow_blue_2.gif「諫早湾干拓事業の請求異議訴訟福岡高等裁判所判決に関する会長談話」を発表した。


(公害対策・環境保全委員会特別委嘱委員 吉野隆二郎)



日弁連短信


8月が一番好き

酷暑が続く。事務次長 小町谷育子「でも8月が一番好き。戦争の番組をたくさんやってくれるから」。『大家さんと僕』(矢部太郎作)で、上品な物腰の大家さんが語る。8月放映の『ゲッベルスと私』も戦争を題材として取り上げた映画だ。ナチスの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書だった103歳の老女ポムゼルが、「何も知らなかった。私には罪はない」と言う。モノクロなだけに、彼女の顔に深く刻まれた無数のしわが痛々しい。映画の原題は“A German Life”(あるドイツ人の人生)。戦争というものが一般の人々の生活を抑圧する様を描いたことが原題からうかがわれる。同時に、戦争に無意識に同調・協力した人に自分を重ね合わせてみることも問うているのだろう。
話変わり、この8月の暑さに負けないようなホットな話題として、国際仲裁の活性化に向けた活動がある。
日弁連は2017年2月にarrow_blue_2.gif「日本における国際仲裁機能を強化することに関する意見書」を公表し、日本が国際紛争解決地としてより多く選定され、日本の法曹が国際仲裁に関与する実務家としてより広く活躍できるよう、国際仲裁の実施に適した物的施設の整備、仲裁法制の整備、仲裁機関の拡充、仲裁に携わる法律実務家の確保、養成など物的・人的インフラ整備のための取り組みなどの施策や体制整備を政府に求めている。
この1年余で、国際仲裁を巡り目まぐるしい進展があった。本年2月に一般社団法人日本国際紛争解決センターが発足し、大阪中之島合同庁舎を借りて、5月に国際仲裁の審問施設の提供を始めた。同所ではさまざまな国際仲裁に関するセミナーなども開催されている。日弁連はこのセンターの運営協議会で公益社団法人日本仲裁人協会と共同事務局を務めている。
政府も4月に関係府省連絡会議で、「国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策(中間とりまとめ)」)を公表し、国際仲裁の各種情報、情勢およびトレンドの把握、人材育成、関連法制度の見直しの要否の検討、施設の整備といった基盤整備を早急に進める必要があるとしている。このうち、関連法制度の見直しの一つとして、法務省司法法制部と日弁連は共同で「外国法事務弁護士による国際仲裁代理等に関する検討会」を設置した。研究者、弁護士、外国法事務弁護士、企業関係者の9人が8月31日から議論を行っている。
日本における国際仲裁の活性化に向けて、日弁連の活動を加速化する必要がある。


(事務次長 小町谷育子)



弁護士職務の適正化に関する全国協議会
8月3日 東京都千代田区


弁護士職務の適正化に関する弁護士会の取り組みを共有し、今後の活動に生かすため、全弁護士会の担当役員等が集まり全国協議会を開催した。


市民窓口及び紛議調停に関する全国連絡協議会

弁護士職務の適正化に関する委員会の大竹寿幸委員(第二東京)らが、弁護士業務に関する市民窓口についてのアンケート結果を報告した。2017年の苦情対象弁護士等の数は1万人を超え、苦情の内容は、①対応や態度、②処理の仕方、③処理の遅滞、④報酬の順に多いことが明らかとなった。また、市民窓口の受付を担当する弁護士会職員にアンケートをした結果、受付の際に暴言を浴びせられる、電話をなかなか切らせてもらえないなどの事例があることも分かった。弁護士会の受付体制には、①申出人の名前も対象会員の氏名も聞かずに担当につなぐ類型、②申出人と対象会員の氏名といった基本情報だけを聞き担当につなぐ類型、③基本情報のほかに苦情の概要を聞き担当につなぐ類型があり、各類型のポイントなどについて議論した。
紛議調停に関しても、申立人が遠隔地に居住するなど手続を進めることが困難な事例や、同一事案につき申し立てを繰り返す事例が報告され、取るべき対応策を協議した。


懲戒手続運用等に関する全国協議会

弁護士会が独自に立件した事例として、預り金を着服した会員について調査を請求した事例、業務停止処分期間中に弁護士業務を行い、業務停止4月の懲戒処分がなされた事例、預り金の私的流用で除名の懲戒処分がなされた事例について出席者から報告があり、意見交換を行った。
宮崎裕二副委員長(大阪)は、弁護士の不祥事は弁護士会の規模を問わず起こり得るものであり、重大な不祥事に直面した場合には速やかに懲戒手続を取る必要があると述べた。その上で、不祥事事案の対応についてはノウハウの蓄積が難しいため、今回報告された弁護士会の取り組みを参考にしてほしいとまとめた。



第14回 ACLA/CCBEとの三極会議
7月21日~23日 福岡市


参加者の皆さまと 中華全国律師協会(ACLA)および欧州弁護士会評議会(CCBE)との情報・意見交換の場である三極会議が福岡市で開催された。日弁連から菊地会長をはじめとする12人が参加したほか、開催地の福岡県弁護士会から上田英友会長が参加した。


菊地会長の議事進行により、①刑事司法、②情報とプライバシー、③AI・テクノロジーの活用に向けて、④外国法律事務所および外国資格弁護士の制度および管理についての4つのテーマと、各団体の最近の活動に関して、活発で充実した情報・意見交換が行われた。
特に②と③については、情報テクノロジーの進展により多くの個人情報が収集・管理される中、いかにして個人のプライバシーや権利を保護すべきか横断的な議論がなされ、2つのテーマが密接に関連することが確認できた。
日弁連は、①に関して取調べの録音・録画制度の導入を報告した。これに対しCCBEからは「弁護人の立会いが認められていない中で取調べの全過程が録音録画されたことをどのように確認するのか」との質問がなされ、取調べへの弁護人立会権が司法判断によって確認されている欧州との違いを再認識した。
今回の会議は日英同時通訳付きとしたため、限られた時間で充実した議論が可能となった。他方、会議以外の場では、日弁連執行部の挨拶が全て英語でなされ、日本側参加者がCCBE・ACLAからの参加者と英語で談笑するなど、英語での積極的な交流が行われたことも印象的であった。
開催地弁護士会である福岡県弁護士会の温かいもてなしに心から感謝の意を表したい。


(国際室嘱託 皆川涼子)



地域で防ごう!消費者被害 the 総括
各地に広がる!被害防止の工夫と連携
8月3日 弁護士会館

arrow_blue_2.gif地域で防ごう!消費者被害 the 総括 ~各地に広がる!被害防止の工夫と連携~


日弁連は、悪質な消費者被害の予防・救済を目的に、地域に根ざした団体・機関との連携に向けた取り組みとして、全国各地で連続シンポジウムを開催してきた。現時点での集大成となるシンポジウムを開催した。(消費者庁ほか20団体が共催・後援)


連続シンポジウムの中間総括

消費者問題対策委員会の国府泰道幹事(大阪)が基調講演を行い、各地(計16か所)で開催されたシンポジウムを振り返った。同様のシンポジウムは今後も各地で開催される予定だが、法的規制を待つのではなく、団体等の連携強化と運用の工夫により、法的規制と同様の効果を実現していくことが重要であると訴えた。


全国的団体による取り組み

菅井義夫氏(日本退職者連合事務局長)は、退職者が被害を受けやすいことから、事前拒否者への勧誘禁止制度の導入が必要であるとした。中山徹氏(警察庁生活安全企画課課長補佐)は、消費者被害防止のために留守番電話や通話の常時録音や金融機関の振り込み制限が有用だと語った。堂本敏雄氏(株式会社セブン︲イレブン・ジャパン)は、高齢者の保護や特殊詐欺の防止におけるコンビニエンスストアの取り組みを紹介した。


各地の取り組み~いろいろ工夫しています

青海万里子氏(NPO法人消費者支援ネットワークいしかわ理事・事務局長)は、「見守りネットワークのつくり方&運営マニュアル」を利用したネットワークづくりを紹介した。小椋昇明氏(徳島県危機管理部次長)は、来年度中に県内全市町村に見守りネットワークを設置すべく取り組んでいると述べた。末吉江衣会員(徳島)は、高校生・大学生が取り組む消費者の啓発活動について報告した。
そのほか、大阪の老人クラブによるステッカーを用いた被害防止の取り組みや、北海道の地域消費者被害防止ネットワークによる見守りを重視した活動、広島の社会福祉協議会の音楽劇で特殊詐欺の手口を実演し、被害防止を呼び掛ける活動などが紹介された。



弁護士に会ってみよう!
夏休み特別企画
7月23日 弁護士会館

arrow_blue_2.gif弁護士に会ってみよう!夏休み特別企画


日弁連は、年間を通じて、弁護士という進路に関心のある高校生や大学生の参加を募り、若手会員が弁護士の仕事や活躍の場について説明や質疑応答を行う企画を実施している。7~8月の夏休み期間に設定された特別企画(全4回)のうち本稿で取り上げる回には25人の学生が参加した。


松井智会員(東京)は、弁護士の1日をテーマとした説明の中で、民事・刑事事件の種類や、訴訟・調停・相談といった手続を解説した。関理秀会員(東京)は、パンフレット「弁護士になろう!!8人のチャレンジ」をベースに、さまざまな分野で活躍する弁護士を紹介した。青野博晃会員(東京)は、紛争を解決するだけでなく、新たなサービスを提供するためのルールを作り出す仕事もあると弁護士の業務分野の幅広さを紹介した。参加者からの質疑において、刑事事件で被疑者・被告人を弁護する理由を問われた内村涼子会員(東京)は、人権や、証拠による証明の重要性を説いた。
その後、弁護士会館や裁判所を見学するグループと、会議室で説明・質疑応答を続けるグループに分かれ、後者では、「法の支配の重要性を感じるのはどのようなときか」など、引き続きさまざまな質問が出された。
企画後のアンケートでは、「弁護士の仕事の幅広さが分かり、より興味が湧いた」などの感想も寄せられた。

 



企業内弁護士最前線
テレビ局のインハウスローヤーは何をしているのか?
7月11日 弁護士会館


日弁連は2014年度以降、若手の企業内弁護士に向けた研修を開催している。元TBS企業内弁護士の國松崇会員(第一東京/日本組織内弁護士協会理事)を講師に迎え、2018年度第1回目(全6回)を開催した。


テレビ局のビジネスモデル

國松会員は、放送で広告収入を得る従来からのビジネスモデルが依然主流であるとしつつ、近年はビデオ化や書籍化、有料配信などの放送外事業収入の獲得を目指す傾向が強まっていると述べた。また、インターネットの台頭により、テレビ番組の広告付き無料配信サービスが急速に成長し、法務部門の活躍の場が拡大してきていることを指摘した。


テレビ局のインハウスローヤーの業務

國松会員は、日常業務として、番組制作に関する各種契約書のチェック、番組スタッフの相談への対応、トラブル対応、各種規定の整備、社内セミナーの実施などを挙げた。業務を行う上で著作権法の知識は必須だが、自身は著作権法を専門に勉強した経験はなく、入社後に実務に対応しながら著作権法への理解を深めていったと振り返った。
また、業界特有の現象として、番組制作の場面では業界慣習による契約の修正がしばしば行われていること、肖像権・著作権やプライバシーの侵害、名誉毀損などのトラブルがあった場合、その相手だけでなく一般視聴者もテレビ局の対応に注目していると意識する必要があることを挙げた。さらに、スタッフの入れ替わりが激しい番組制作現場で経験をどのように蓄積させていくかが常に課題となることを指摘した。
テレビ局のインハウスローヤーとして仕事をする醍醐味は、面白いものを作りたいと考えて番組作りをしている集団にチームの一員として参加できることにあるとし、その中で一般視聴者の視点を失わないことは仕事をする上で役立つ資質であると述べて講演を締めくくった。



高校生模擬裁判選手権
8月4日 東京・大阪・石川・徳島

arrow_blue_2.gif第12回高校生模擬裁判選手権を開催します!


毎年、高校生たちの爽やかな熱戦が繰り広げられる高校生模擬裁判選手権。第12回目を迎えた今年は、全国4つの会場で同日開催され、全26校が参加した。
本稿では、関東大会の模様をお伝えする。
(共催:最高裁判所、法務省、検察庁ほか)


今回の課題事案は、被告人が、妻を殺害した高校の先輩を自宅マンションに半日滞在させたというもの。各校とも工夫を凝らした主張・立証を行った
争点は、先輩が殺人犯だったことについての被告人の故意の有無である。被告人は、先輩が殺人を犯したことを知った上でかくまったのか、それとも何も知らずに迎え入れただけなのか…?
模擬裁判は、東京地方裁判所の実際の法廷で行われ、高校生たちは、検察官役と弁護人役に分かれ、午前と午後それぞれの試合を行った。裁判長役は弁護士が、審査員は裁判官・検察官・弁護士・学者・報道関係者などが務めた。
高校生たちは、なかなか思いどおりの答えを返してくれない証人に食らいついて何とか証言を引き出そうとしたり、自分たちの主張を整理して記した大きな模造紙を掲げて示したりと、工夫を凝らして主張立証活動を行った。
審査員からは、「証拠の信用性がよく検討されていた」「質問が端的で分かりやすく、ストーリーが見えやすい構成になっていると感心した」「修習生の模擬裁判と比べても遜色ないほどの完成度の高さだった」など、惜しみない賛辞が贈られた。
参加した高校生たちは、「たくさんの事実がある中で、重要な事実を拾い上げるのがとても難しかった」「証人から想定外の答えが返ってきて慌てたけれど、その答えを踏まえて論告の内容を修正し、よりよいものにできた」などと感想を述べた。また「裁判手続が全く分からなかったので、最初は本当に大変だったけれど、支援弁護士にいろいろと助けてもらい、自分たちの主張をまとめることができた」と支援弁護士への感謝の言葉を笑顔で語った。
高校生たちは、この模擬裁判を通じ、刑事手続・裁判手続への理解を深めただけでなく、事実を的確に把握し、多角的に検討する力、論拠をもって自分の意見を形成し、分かりやすく周囲に伝える力などを養ってくれたようだ。



        各会場の優勝校および準優勝校

【関東大会(東京)】
優 勝:静岡県立浜松北高等学校(静岡)
準優勝:中央大学杉並高等学校(東京)


【関西大会(大阪)】
優 勝:西大和学園高等学校(奈良)
準優勝:同志社香里高等学校(大阪)


【中部北陸大会(石川)】
優 勝:福井県立大野高等学校(福井)
準優勝:金沢大学附属高等学校(石川)


【四国大会(徳島)】
優 勝:高松市立高松第一高等学校(香川)
準優勝:徳島文理高等学校(徳島)



会員向け講演会
ドイツの無期自由刑
死刑廃止国における最高刑の一動向
7月9日 弁護士会館


日弁連は2016年10月「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本で国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであるとした。
死刑に代わる最高刑を考えるに当たり、小池信太郎教授(慶應義塾大学)を招き、無期刑を最高刑とするドイツ刑事法について理解を深めた。


小池教授は、ドイツ(旧西ドイツ)における死刑廃止の経緯や無期刑の動向について解説した。
――ドイツは、ナチス治世下で死刑制度が濫用された反省から、1949年に制定した基本法(憲法)で死刑制度を廃止した。当時、世論の多数は死刑存置を望んでおり、基本法制定後もしばらくは死刑復活を求める声が強かったが、次第に沈静化した。
死刑廃止に伴い、もともとあった無期刑が最高刑に繰り上がると、釈放の希望の乏しい長期拘禁による「人格損壊作用」などに注目が集まり、無期刑の受刑者にも釈放への希望を持たせなければならないという認識が広がった。そして、連邦憲法裁判所による「無期自由刑の行刑が保障されるのは、受刑者に、将来自由を再び獲得できる具体的かつ原則として実現可能でもあるチャンスがある場合に限られる」との判断を契機として、1981年、無期刑の仮釈放制度を定める刑法改正が行われた。
ドイツ刑法における無期刑の仮釈放の規定は、①15年間の刑の執行、②行為責任の特別な重大性がさらに長期の執行を要請しないこと、③再犯の恐れに関する良好な予測、④受刑者本人の同意という4つの要件の下、仮釈放を義務的に認めている。近時の調査によれば、無期刑で仮釈放された者の服役期間(中央値)は17.0年である。
仮釈放の審理を担当するのは、行政官庁ではなく、地方裁判所の刑事執行部(執行裁判所)である。無期刑のような重い刑の執行上の手続は、判例上、必要的弁護の対象事件とされており、弁護人は受刑者本人の聴取への立会権を有する。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.135

書店探訪
店長インタビュー


東京高等地方簡易裁判所合同庁舎の「至誠堂書店霞が関店」と弁護士会館の「弁護士会館ブックセンター」を訪ね、それぞれの店長にお話を伺いました。

(広報室嘱託 本多基記)



誠堂書店霞が関店・鈴木廣明店長に聞く


 至誠堂書店はこんな書店です

「書籍の情報を積極的に提供したい」と語る至誠堂書店の鈴木店長

当社は大正2年に創業し、会社として設立したのは昭和25年です。現在は、霞が関店のほか神奈川県弁護士会館内の横浜店、司法研修所庁舎内の司法研修所店の2店舗があり、オンライン書店での販売も行っています。
霞が関店では、1日に150人くらいのお客様が書籍を購入されます。購入されない方も含めるとその倍くらいのお客様がいらっしゃると思います。お客様は裁判官や書記官、弁護士の方々が中心ですが、一般のお客様もいらっしゃいます。1年のうちでは、新しい六法の発売時期である10月頃から司法修習を終了した方々が一斉に弁護士登録をされる12月頃までが忙しい時期となります。法改正があった時や定番書籍の最新版が発売された時期なども忙しくなります。


 裁判官・弁護士それぞれの売れ筋は

裁判官の方々は法改正に関連する書籍をよく購入されます。特に立案担当者が執筆した解説書やQ&Aなどの書籍は人気があります。法曹会から出版された書籍や、民法の我妻栄先生、労働法の菅野和夫先生、刑法の西田典之先生など著名な先生方の体系書が改訂された際もよく購入されています。
弁護士の方々には実務書が人気です。特に裁判官が執筆した書籍をよく購入されています。弁護士の方々が実務書を好む傾向は以前からありましたが、最近の特徴的な傾向は「若手弁護士向け」と銘打った書籍がよく売れていることです。若手弁護士の方々を中心にそういった書籍を読み込みながら業務をされているのかもしれません。


 法律家の本の情報源を目指して

当店のスペースは限られていますが、お客様のニーズに応えられる品揃えを日々心掛けています。忙しいお客様が時間をできるだけ費やさないよう、書籍を見つけやすく配置し、店員は書籍の所在を把握してお客様からの質問に答えられるようにしています。
当社ではウェブサイトを運営していますが、店舗とともに、法律家の皆さんの本の情報源となるよう書籍の情報を積極的に提供したいと思っています。



弁護士会館ブックセンター・人見泰司店長に聞く

 

 弁護士会館ブックセンターはこんな書店です

「積極的に声をかけてほしい」と語る弁護士会館ブックセンターの人見店長当社は、法律図書専門書店として、弁護士会館ブックセンター(霞が関)と大阪高裁内ブックセンター(大阪市北区)を運営し、インターネット販売もしています。弁護士会館ブックセンターは2000年に、大阪高裁内ブックセンターは2014年に開店しました。
弁護士会館ブックセンターでは1日に260人から300人のお客様が書籍を購入されます。購入されない方も含めると1日に500人から600人くらいのお客様がいらっしゃいます。場所柄来店するお客様の約95%が弁護士の方々です。


 書籍の買い方が変わってきています

私は当社に入社する以前から法律図書を扱っており、この道30年を超えています。以前の弁護士の方々は同時に数冊をまとめ買いする方が多く、同じジャンルの書籍でも複数冊購入される方が多かったです。最近のお客様は、あらかじめインターネットなどで調査されるのでしょうか、購入される本を絞ってお買い求めになる方が多いように感じます。


 書籍の並べ方も工夫しています

書籍の配置には気を配っています。一般的な書店ではジャンルごとにテキスト類から実務書の順に陳列することが多いのですが、当店では需要のありそうな書籍から順に並べています。書店側としてはじっくり店内を回遊していただきたいところですが、できるだけ早く欲しい本を見つけられるように工夫しています。また、大きな荷物を抱えるお客様が多いため、狭い店内でけがをされないよう通路や棚の整理整頓を心がけています。


 お探しの書籍を教えてください

以前は弁護士の方々から書店の品揃え等に意見をいただくことがあったのですが、最近では少なくなりました。お客様にはぜひ積極的に声をかけてほしいと思っています。
限られたスペースにあらゆる書籍を並べることはできません。どのような書籍をお探しか教えてもらえれば、書店の内外を問わず探しますし、もし出版されていなければ、出版社にご要望を伝えて出版の提案もいたします。当店には、法律図書の出版社と読者との橋渡しをする重要な役割があると考えており、出版社と一緒に皆さんのお役に立てる書籍を提供したいと思っています。




日弁連委員会めぐり98
会館運営委員会


今回の委員会めぐりは、会館運営委員会です。活動内容等について、長尾亮委員長(第一東京)、武内更一副委員長(東京)、桑原康雄副委員長(第二東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 木南麻浦)


より良い会館を目指して活動しています

左から武内副委員長、長尾委員長、桑原副委員長

弁護士会館(以下「会館」)は1995年に竣工し、同時に会館のオーナーである日弁連、東京弁護士会、第一東京弁護士会および第二東京弁護士会の四会が、当委員会を設置しました。
当委員会は会館の管理組合ともいうべき存在で、①各種設備機器等の維持管理業務、②清掃業務、③防犯・防災等の管理業務などを中心に検討・決定しています。
今年3月には、エレベーターの混雑を解消するため、混雑時間帯の1階・地下1階への優先配車運用を導入しました。また、昨年3月に閉店した地下1階テナント「食事処 大平」の跡地は、多くの方々から希望のあったコンビニエンスストアに出店してもらうべく、協議を進めています。


大規模改修の検討を進めています

現在、大規模改修に向け、プロジェクトチームを設置して検討を進めています。改修の基本設計・実施設計はすでに完成し、入札による施工業者の選定段階に来ています。来年度には着工し、2021年秋ころまでに施工完了する予定です。
会館も築23年ですから、さまざまな設備が老朽化しており、空調や照明など多くのものを全面的に更新します。地下1階の会館入口等の自動ドア化、女性トイレの個室増設なども予定しています。防災センター内設備の更新や外壁補修などは、早急な対応が必要でしたので、今年6月までに先行実施しました。


会員へのメッセージ

まずは、大規模改修へのご協力をお願いします。会館は会員の皆さんの納めた会費で運営されています。会費がどのように使われているのか、ぜひ関心を持っていただき、声を寄せていただきたいです。
また、若手会員の皆さんには、ぜひ当委員会に参加していただきたいです。当委員会での活動は、昨今大きな問題となっているマンションの建て替え問題などにも生かせますので、よい経験になると思います。



ブックセンターベストセラー
(2018年6月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名・発行元名
1 携帯実務六法2018年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
2 最高裁判所判例解説 民事篇 平成27年度(上)(1月〜6月分) 法曹会 編 法曹会
3 最高裁判所判例解説 民事篇 平成27年度(下)(7月〜12月分) 法曹会 編 法曹会
4 量刑調査報告集Ⅴ 第一東京弁護士会刑事弁護委員会 編 第一東京弁護士会
5 超早わかり・「標準算定表」だけでは導けない 婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)[新装版] 婚姻費用養育費問題研究会 編 婚姻費用養育費問題研究会
6 後遺障害の認定と異議申立−むち打ち損傷事案を中心として− 加藤久道 著、松本守男 医学監修 保険毎日新聞社
7 労働関係訴訟の実務[第2版][裁判実務シリーズ1] 白石 哲 編著 商事法務
8 相続法改正のポイントと実務への影響 山川一陽・松嶋隆弘 編著 日本加除出版
Q&Aで学ぶGDPRのリスクと対応策 中崎 尚 著 商事法務
10 保険法(上) 山下友信 著 有斐閣



海外情報紹介コーナー②
Japan Federation of Bar Associations


データ分析の弁護士業務への活用


米国では、弁護士らがアルゴリズムやビッグデータ分析を弁護士業務に活用している。例えば、刑事事件の量刑分析、定額制の弁護士報酬の設定、潜在顧客に向けた効果的な広告活動等に利用されているほか、飲酒運転の事案で裁判所への申立内容と事件結果を分析し弁護士を格付けするアルゴリズムも開発された。依頼者にとって透明性が高まり法律サービスが大きく変わると期待する意見もある一方で、行き過ぎを懸念する声や改善の必要性を指摘する声もある。

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(国際室嘱託 坂野維子)