国連人権理事会における日本に対する第4回普遍的定期的審査の勧告に関する会長声明


2023年1月31日、国連人権理事会の作業部会において、日本の人権状況に関する普遍的定期的審査が行われた。普遍的定期的審査とは、全ての国連加盟国がそれぞれの人権状況について、世界人権宣言や人権条約等に照らして相互に審査を行い、改善すべき点について勧告を発出する制度であり、日本が審査を受けるのは2008年の第1回審査以降、今回で4回目となる。


当連合会は、審査に先立ち、日本の人権状況に関するarrow_blue_1.gif報告書の提出、駐日大使館向け説明会の開催、在ジュネーブ政府代表部向けのセッションへの会員派遣などを通じて、各国に対して情報提供を行ってきた。


今回の審査では、115か国が日本に対して発言を行い、勧告の数は約300であった。特に多くの勧告が寄せられたのは、死刑制度の廃止のほか、パリ原則に沿った国内人権機関の設立、個人通報制度等の選択議定書の批准、包括的差別禁止法の制定、ジェンダー平等、障害者、性的少数者、少数民族などマイノリティの権利、女性や子どもに対する性的搾取、外国人労働者や技能実習生に対する十分な保護と支援、受刑者の処遇などの問題であった。これらは、他の多くの国が実践済みでありながら日本が実践できていないものであり、これらの人権分野において特に日本が世界の人権水準に照らし、遅れを指摘されていることを意味している。加えて、新型コロナウイルスが貧困層など社会的に脆弱な人々に与える影響に対処するための効果的措置、原発汚染水の排出計画の中止や科学的情報の提示、福島避難民の問題、難民・移民保護政策の強化、入管施設における被収容者の人権問題などについても複数の国から勧告を受けた。


今後、この審査の結果は2023年6月から7月に開催予定の国連人権理事会本会議において採択される予定であるが、繰り返し指摘されている課題も含め、多くの国から勧告を受けたことは極めて重いと言わざるを得ない。


当連合会は、日本政府に対し、勧告内容を真摯に検討し、国内における人権施策を一層改善するための取組を促進するよう求める。とりわけ2008年の第1回審査以来、日本政府が一貫して「支持(support)」を表明しながら進展が見られない国内人権機関の設立及び個人通報制度の導入をこれ以上放置すれば、他の国連加盟国から、日本が国連の人権保障システムを軽視していると捉えられかねない。日本が国際社会において名誉ある地位を占めるためにも、一刻も早く具体的な取組を開始するよう強く要請する。


当連合会も、今後、勧告内容を十分検討した上で、普遍的定期的審査に関する情報発信、日本政府との対話、国会への働き掛けなどを通じて、今回勧告を受けた人権分野の改善のために引き続き尽力する所存である。



2023年(令和5年)2月9日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治