「小石川事件」再審請求特別抗告申立棄却決定に対する会長声明


最高裁判所第3小法廷は、いわゆる小石川事件について、2022年(令和4年)12月12日付けで、東京高等裁判所第2刑事部の同年4月7日付け再審請求即時抗告申立棄却決定に対する特別抗告申立てを棄却する旨決定した(以下「本決定」という。)。


小石川事件は、2002年(平成14年)7月31日、請求人が、東京都文京区小石川の被害者方アパートに侵入し、被害者の口腔内に白色タオルを押し込んで被害者を窒息によって殺害し、現金約2000円在中のがま口を強取したとされる強盗殺人事件である。


2004年(平成16年)3月29日の東京地方裁判所判決(以下「確定判決」という。)は請求人の自白を決め手として請求人を有罪とした。そこで、弁護団は再審請求審、即時抗告審及び特別抗告審を通じて、自白の信用性を弾劾し、請求人が犯人であることに合理的疑いを生じさせる新証拠を提出してきた。


そのうちDNA型に関する新証拠は最も重要である。被害者の口腔内に押し込まれたタオルは、被害者が日常的に使用していたものであったが、このタオルからは被害者と異なる別の者のDNA型が検出されていた。そこで、弁護団は、このDNA型が請求人のDNA型と異なること、請求人が自白どおり犯行に及んだとすれば、当然、タオルから請求人のDNA型が検出されるべきこと、そして、検出されたDNA型は、当時、被害者方に出入りしていた可能性のある関係者のDNA型のいずれとも異なり、真犯人のDNA型である可能性が高いことを示す新証拠を提出してきた。


また、弁護団は、請求人が、事件当日、被害者方を物色したとすれば検出されるはずの指紋が検出されなかったこと、自白どおりの犯行であれば当然被害者の身体・着衣から検出されるべきである請求人の着衣の繊維が検出されなかったこと等の新証拠も提出し、新旧全証拠を総合評価すれば確定判決の有罪認定に合理的疑いが生じていることを繰り返し主張してきた。


ところが、本決定は、これらの新証拠を十分検討することなく、いわゆる「三行半」で再審請求を棄却した。本決定は、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審においても適用されるとした白鳥・財田川決定を軽視しており、最高裁判所が自ら同決定で示した再審における判断方法に沿ったものとは言えない。本決定は極めて不当であり、容認することはできない。


弁護団は、既に第2次再審請求に向けて準備を進めているとのことであるが、当連合会は、引き続き小石川事件の再審請求を支援し、再審開始、無罪判決の獲得に向けて、あらゆる努力を惜しまないことをここに表明する。



2023年(令和5年)1月30日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治