法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律等の成立に関する会長談話


本年12月10日の臨時国会において、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(以下「新法」という。)が成立した。


この間に、政府、与野党、関係当局等において霊感商法等による被害の救済及び防止に向けた検討が行われ、改正法及び新法によって、これまで勧誘に関して特段の取決めがなかった寄附及び寄附を集める団体について一定の規制が設けられた。今後の被害の救済及び防止に向けた姿勢を示すものとして、率直に評価したい。


もっとも、数々の課題が残されていることも事実である。例えば、取消しができる消費者契約や寄附行為の規制が限定的であり、様々な悪質な手法を防ぐことができない可能性がある。また、寄附の勧誘を行うに当たって、「個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないよう」に十分に配慮しなければならないとの規定が置かれたが、配慮義務では不十分であるとの指摘もある。さらに、子や配偶者の婚姻費用・養育費等を保全するために定められた債権者代位権の行使に関する特例については、要件が厳しく取消範囲が限定的であり、また未成年である被扶養者がその行使をすることが困難な現状があるなど様々な問題もある。


これらの課題を残すこととなったのは、いわゆるマインドコントロールという概念を用いて規制をすることの是非、更にはその状態を誰がどのように認定や評価をするかについて、十分な議論をする時間がなかったことが理由の一つであったと思われる。この課題を克服するためには、配慮義務規定に定められた、自由な意思を抑圧し、適切な判断ができない状況などの具体例について、継続的に事例を収集して様々な観点から調査・分析を早急に行い、実務に活かしていく必要がある。一方で、自己決定権、宗教活動の自由は憲法で保障された人権であるところ、何らかの形で、本人の行為能力や自由を制限するのであれば、相応の適正手続を定めなければならず、この点の議論も不可欠である。


また、改正法及び新法は、主に寄附行為の取消しにより、被害者の救済を図ろうとするものであるが、宗教活動を契機とした家族の問題、心の悩み、とりわけ宗教二世を含む子どもが抱える問題等の解決は置き去りにされたままである。今後、専門家によるカウンセリング等の精神的支援、児童虐待や生活困窮問題の解決に向けた支援等の体制の構築をすることが重要である。成人した宗教二世についても、心の悩みや社会参画の困難性を抱えていることがあるため、同様の支援とともに就労の支援等の体制を構築していくべきである。


当連合会は、これらの課題を解決していくために、引き続き関係機関及び関係団体等との連携を緊密に図り、相談体制の整備を含めた様々な支援を行うとともに、2年後見直しを含め、実効的な被害の救済及び防止に向けた提言と活動を行っていく所存である。



2022年(令和4年)12月14日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治