特定複合観光施設区域整備計画認定手続において公正かつ厳格な審査を求めるとともに改めてカジノ解禁に反対する会長声明


2016年12月15日には特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律、2018年4月27日には特定複合観光施設区域整備法(以下「カジノ解禁実施法」という。)がそれぞれ成立し、現在、カジノ解禁に向けて準備が進められている。


これに対し、当連合会は、2014年5月9日に「arrow_blue_1.gif『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案』(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する意見書」を公表し、それ以降、カジノ解禁には暴力団対策上の問題、マネー・ローンダリング対策の問題、ギャンブル依存症患者の増大、多重債務問題の拡大の危険性及び青少年の健全育成への悪影響等の多くの弊害があることを理由に、一貫して反対してきた。


2021年7月19日のカジノ解禁実施法施行後に、カジノ管理委員会規則等が制定されたが、当連合会が指摘する前述の弊害への対応は十分とは到底言い難く、カジノ解禁に対する懸念は払拭されていない。


そのような状況下で、2022年4月27日、カジノ解禁実施法に基づき大阪府及び長崎県から国土交通省に対し、特定複合観光施設区域整備計画(以下「整備計画」という。)の提出がされた。


大阪府及び長崎県の整備計画については、各地方自治体議会の議決を経て提出されたものではあるものの、各地の市民からは、前述の懸念に加えて、立地する土壌問題に起因して発生が見込まれる地方自治体の費用負担の問題や、資金調達を始め想定されている計画の実現可能性等、様々な点から疑問が示されている状況である。実際、大阪府においては、カジノ解禁の是非について住民投票条例の制定を求める直接請求の署名が法定数を超えるなど、むしろ整備計画への懸念を示す声が大きくなっている。


このような住民の不安の大きさを考えれば、国土交通省が行う整備計画の認定手続においては、認定ありきで審査するのではなく、整備計画について懸念する意見を踏まえつつ、慎重かつ透明性を担保した審査が求められる。


それにもかかわらず、政府が定めた「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針」(以下「基本的な方針」という。)によれば、認定審査に当たっては、有識者により構成する審査委員会を設置して審査を行うとしつつ、会議は非公開とされ、審査委員会における認定審査の結果及び評価の過程については、整備計画の認定後にならないと公表されないとされている。しかし、いかなる審議経過であったかについて認定結果が出るまで全く公表されないとなれば、それは慎重かつ透明性を担保した審査手続とは言い難い。仮に会議そのものを公開しないとしても、開催日や審理対象・審議結果等の審査状況に関する議事録ないしは議事要旨を、適宜、公開しつつ審査がなされるべきである。


また、基本的な方針によれば、要求基準(認定を受けるために必ず適合していなければならない基準)と評価基準(整備計画が優れたものであるかを公平かつ公正に審査するための基準)を定めて審査するとされている。しかし、大阪府では、住民投票条例の制定を求める直接請求の署名が法定数を超え、同直接請求がなされたにもかかわらず住民投票が実施されなかったように、そもそも要求基準の1つである地域における合意形成の手続が適切に行われていないのではないかとの批判がある。さらに、前述のように、資金調達や計画の実現性の観点から両基準該当性につき疑問を示す声もあり、市民団体等からヒアリングを行うなどして、審査に反映させることが必要である。整備計画の認定審査手続は、地域の合意形成及び住民から示される様々な懸念を払拭するための手続保障なしに進められるべきではない。


当連合会は、これまでと変わらず一貫してカジノ解禁について反対の意見を表明するとともに、国土交通大臣及び審査委員会に対して、整備計画の審査に当たっては、地域住民の声を適切に反映させつつ、公正かつ厳格に審査することを求める。



2022年(令和4年)8月25日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治