福島第一原発事故損害賠償請求集団訴訟についての最高裁決定を受け、改めて国に対し、原子力損害賠償に係る中間指針等の見直しを求める会長談話


最高裁判所は、東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)で避難した住民等が損害賠償を求めた集団訴訟に関し、本年3月2日に3件について、同月7日にも3件について、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)による上告及び上告受理申立てを退ける決定(以下「本件各決定」という。)をした。


東京電力は、原子力損害賠償紛争審査会(以下「原賠審」という。)が定めた「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」及びその追補(以下「中間指針等」という。)に基づいて被害者への賠償を行っているが、全国各地で提起されている約30件の福島第一原発事故に関する損害賠償請求の集団訴訟においては、中間指針等の定める水準を超える内容の損害賠償が認められるかが主な争点となっている。


本件各決定により、福島(3件、うち1件はいわき支部)、前橋、千葉、東京の各地方裁判所に提訴された6件の集団訴訟について、各控訴審判決が確定することとなった。これらは、東京電力に対する請求に関する判断として全国的な先駆けとなるものであるところ、各内容において違いがあるものの、いずれも全体として中間指針等の水準を上回る内容の損害賠償を認めるものであったことは、中間指針等の見直しを行い、福島第一原発事故の被害者の被害回復に向けた取組を一層進めていかなければならないということを示していると言える。


この点、当連合会は、2019年7月19日付け「東京電力ホールディングス株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の判定等に関する中間指針等の改定等を求める意見書」及び2021年11月15日付け「福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の実態に関する調査・評価・結果の公表の実施及び中間指針等の改定を改めて求める会長声明」において、原賠審に対して、現在の原子力損害の実態に関する専門家調査を改めて実施し評価及び結果を公表すること並びにこれまでの原子力損害賠償紛争解決センターで提示された和解案や集団訴訟の裁判例の分析等を踏まえ中間指針等を見直すことを求めている。


当連合会は、本件各決定を受けて、改めて国に対し、東京電力による福島第一原発事故の被害者への十分な損害賠償が早期に実現されるよう、中間指針等の見直しを速やかに行うことを求める。



 2022年(令和4年)3月28日

日本弁護士連合会
会長 荒   中