消費者契約法の改正骨子案に関する会長声明


消費者庁は、2021年9月に消費者契約に関する検討会(以下「本検討会」という。)の報告書(以下「検討会報告書」という。)が取りまとめられたことを受けて、2022年2月1日、消費者契約法の改正骨子案(以下「本骨子案」という。)を明らかにした。本検討会は、2018年改正の際の衆参両院附帯決議において指摘された喫緊の課題の検討のため、消費者庁が開催し、約1年9か月にわたって議論を重ね、取りまとめをするに至ったものであるが、本骨子案の内容は、検討会報告書の要請に十分に応えていない。


検討会報告書では、①法第4条第3項各号の困惑類型の脱法防止規定の創設、②消費者の慎重な検討の機会を奪うような勧誘があった場合の消費者の心理状態に着目した取消権の創設、③判断力の著しく低下した消費者が生活に著しい支障が及ぶような内容の契約をした場合の消費者の判断力に着目した取消権の創設、という新たな提案がなされた。また、サルベージ条項により賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項を不当条項として無効とすることや、所有権等を放棄するものとみなす条項及び消費者の解除権の行使を制限する条項を不当条項に関する法第10条の第1要件の例示として掲げることも提案された。これらの具体的提案は、上記附帯決議や成年年齢引下げの民法改正の際の参議院附帯決議において、高齢者、若年成人等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を事業者が不当に利用した場合の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)の創設が求められたこと等に対応しようとするものであった。


当連合会も、高齢者や若年者の消費者被害に対応するためには、少なくとも、検討会報告書で提案された取消権や不当条項に関する規定を設けるべきという内容の意見を表明していた(2021年10月18日付け「消費者契約に関する検討会報告書に対する意見書」)。


しかし、本骨子案には、これらの取消権に関する提案に対応する部分は含まれておらず、不当条項に関する提案についても、賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項を無効とする旨が示されただけである。


多発する消費者被害の救済に資するよう、法改正手続は早急に進められるべきであるが、法案の取りまとめに当たって、高齢者や若年者の消費者被害の防止の見地から、本骨子案は根本的に見直されるべきであり、少なくとも、検討会報告書が提案した取消権及び不当条項に関する規定を含むものとすべきである。



 2022年(令和4年)2月28日

日本弁護士連合会
会長 荒   中