「鶴見事件」の死後再審請求を支援する会長声明


本日、元再審請求人髙橋和利氏の遺族は、横浜地方裁判所に対し、いわゆる「鶴見事件」について、死後再審請求の申立てをした。当連合会は、この再審請求を支援し、速やかに再審開始決定がなされるよう求めるものである。


本件は、1988年(昭和63年)6月20日に発生した強盗殺人事件である。髙橋氏は、同年7月1日に逮捕され、第1回公判から殺人については一貫して無罪を主張していたが、1995年(平成7年)9月に横浜地方裁判所が死刑判決を宣告し、控訴、上告も棄却され、2006年(平成18年)に死刑判決が確定した。


確定判決は、髙橋氏の自白の信用性を否定したにもかかわらず、情況証拠のみで有罪を認定し、死刑判決を宣告したものである。当連合会は、2017年(平成29年)8月に鶴見事件委員会を設置し、以来、髙橋氏の救済のために最大限の支援をしてきた。


第2次再審請求審において、弁護人は、①本件の凶器は確定判決が認定した「バール様の凶器」「プラスドライバー様の凶器」ではないとする法医学鑑定、②髙橋氏以外の真犯人の可能性を示す新証拠、③本件現場から採取された黄色ビニール片、黒色小片は、いずれも髙橋氏に由来するものではなく、真犯人に由来するものであるとする新証拠、④髙橋氏の自白は虚偽であり、髙橋氏は犯行を体験していない可能性が高いとする心理学鑑定等、多数の新証拠を提出した。しかし、本年10月8日、残念ながら髙橋氏は87歳で病死し、本年11月11日に訴訟手続の終了決定がなされた。


髙橋氏は、逮捕されてから33年以上もの長期間にわたり身体を拘束され、かつ1995年(平成7年)の死刑判決宣告から病死に至るまでの26年以上の間、死刑執行の恐怖にさらされてきたのであり、生存中に救済されるべきであった。今回の申立ては、かかる髙橋氏の遺志を引き継ぎ、髙橋氏の遺族によってなされたものである。


当連合会は、今回の死後再審請求の申立てについて、引き続きこれを支援し、鶴見事件の再審開始、無罪判決の獲得に向けて、あらゆる努力を惜しまないことをここに表明する。



 2021年(令和3年)12月24日

日本弁護士連合会
会長 荒   中