死刑執行に対し強く抗議し、死刑制度を廃止する立法措置を講じること、死刑制度が廃止されるまでの間全ての死刑の執行を停止することを求める会長声明


本日、東京拘置所及び大阪拘置所において3名の死刑が執行された。岸田内閣が発足し、古川禎久法務大臣が就任してからわずか79日目での執行である。


前回の執行は、2019年12月26日であった。本年3月には京都で国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催され、我が国の刑事司法の在り方について世界中の注目が集まった。こうした中で、約2年間、死刑の執行がない状態が続いていたにもかかわらず、本日死刑が執行されたことは大変遺憾である。さらに、執行された死刑囚の中には再審請求中の者も含まれており、この点でも今回の執行は強い非難を免れない。


当連合会は、2016年に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、国に対し、死刑制度の廃止を目指すべきであることなどを求めてきた。


死刑制度の問題点については、これまでにも当連合会が繰り返し指摘してきたところであるが、昨今は、外交上の観点からも、死刑制度をこれ以上残すことは許されない情勢となっている。


本年7月には米国の司法長官が、連邦レベルでの死刑の執行を停止する指示を出すなど、世界的な死刑廃止の流れはさらに進んでいる。米国が死刑制度を廃止すれば、OECDに加盟する38か国のうち死刑を執行する国は日本のみとなる。


日豪円滑化協定の交渉においては、日本に死刑制度があることが協定締結の障害となっていると言われている。2020年には、日本に死刑制度があることを理由に南アフリカから被疑者の引渡しを拒まれる事案があったことが報道されている。


死刑制度の存廃について、法務省は、「基本的には、各国において、独自に決定すべき問題」としている。しかし、もはや国際的な視点抜きに、死刑制度の当否を議論できないことは明らかである。


法制審議会は、昨年、懲役刑と禁錮刑を一本化して新自由刑(拘禁刑)に再編する刑法改正を答申した。これは、応報を主眼とする刑罰制度から、更生と教育を主眼とする刑罰制度への移行を意味するものである。死刑は罪を犯した者の更生を指向しない刑罰であり、新自由刑(拘禁刑)の理念と相容れない。


法務省は、従前から、世論調査において多数の支持を得ているとして、死刑制度の存置を主張してきた。しかし、世論調査でも、死刑に代えて導入される刑罰の内容次第では、死刑の廃止も受け容れられる余地があることが示されている。また、国際人権(自由権)規約委員会等からは、「世論調査の結果にかかわらず」死刑制度の廃止を考慮するよう何度も勧告を受けているのであって、世論調査をよりどころに死刑制度の存置を正当化することは許されない。


当連合会は、本日の死刑執行に対し強く抗議し、死刑制度を廃止する立法措置を講じること、死刑制度が廃止されるまでの間全ての死刑の執行を停止することを改めて求めるものである。



 2021年(令和3年)12月21日

日本弁護士連合会
会長 荒   中