憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話


本日は、日本国憲法が施行されてから74年目の憲法記念日です。


昨年から続く、新型コロナウイルスの感染拡大については、引き続き予断を許さない状況にあり、本年も新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(以下「緊急事態宣言等」といいます。)の下で憲法記念日を迎えることになりました。


緊急事態宣言等の下で、市民や企業等には、外出・移動の自粛や休業・時短等が要請されている状況にあります。しかし、そのような感染拡大防止策を講ずる場合であっても、個人の権利は最大限尊重される必要があります。規制により生活が脅かされたり、事業活動が著しく制約されたりする場合には、速やかに適切な措置を講ずる必要があるとともに、その補償も課題となります。


また、感染者やその家族、医療従事者等への偏見や差別は決して許されないことに留意する必要があります。


加えて、ワクチン接種に伴い発生する様々な問題についても、きめ細やかに対応していく必要があります。


報道によると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、憲法を改正して緊急事態条項の新設を求める声も、与野党の一部にあるようです。しかしながら、感染拡大防止は市民の協力を得ての法律上の対応で十分可能です。憲法に緊急事態条項を新設することは、立法事実を欠くだけでなく、これにより個人の権利の侵害につながるおそれがあります。


また、現在、衆議院の憲法審査会では、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」といいます。)の一部を改正する法律案の審議が行われており、本年5月6日に開催予定の同審査会において採決される可能性も報道されています。当連合会の2018年6月27日付け「憲法改正手続法改正案の国会提出に当たり、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める会長声明」で指摘しているとおり、現在審議されている改正法案で取り上げられている事項以外にも、テレビ・ラジオの有料意見広告規制や最低投票率制度等、検討や見直しを行うべき重要な課題があります。当連合会は、今後もこれらの重要な課題の検討や見直しを含む憲法改正手続法の抜本的な改正を求めていきます。


さらに、昨年は、検察官の定年後勤務延長問題や日本学術会議会員の任命拒否問題が発生しましたが、当連合会は各問題について意見表明を重ね、憲法の基本原則を脅かすような問題があることを指摘しました。


当連合会は、新型コロナウイルスの感染拡大という状況の下においても、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、引き続き、人権擁護のための活動を積極的に行ってまいります。



 2021年(令和3年)5月3日

日本弁護士連合会
会長 荒   中