「恵庭殺人事件」第2次再審請求特別抗告棄却決定に関する会長声明


最高裁判所第二小法廷(菅野博之裁判長)は、本年4月12日、いわゆる恵庭殺人事件第2次再審請求の特別抗告審(申立人大越美奈子氏)について、特別抗告を棄却する決定をした(以下「本決定」という。)。


恵庭殺人事件は、2000年3月16日に発生した殺人、死体損壊事件である。被害者の勤務先の同僚であった申立人に本件の嫌疑がかけられ、逮捕時からの一貫した無罪主張にもかかわらず、確定一審及び二審において、情況証拠のみで、申立人に対して懲役16年の有罪判決が言い渡され、上告も棄却され、確定した。


第2次再審請求審において、弁護人は、被害者の死因は窒息死ではないとする法医学鑑定、被害者の遺体は最初うつ伏せで焼損された後に仰向けで焼損されたとする鑑定、灯油10リットルを人体にかけて燃焼した場合に被害者の遺体のような炭化による9キログラムの体重減少は生じ得ないとする鑑定等、多数の新証拠を提出した。


請求審の札幌地方裁判所は、弁護人が提出した鑑定等の新証拠について事実の取調べを行ったにもかかわらず、新証拠の証拠価値を否定し、2018年3月20日に再審請求を棄却した。また、即時抗告審の札幌高等裁判所は、弁護人が即時抗告申立補充書、鑑定意見書の提出等の予定を告知していたにもかかわらず、同年8月27日、即時抗告を棄却した。


これらの決定は、弁護人の提出した科学的鑑定の意義を全く理解せず、論理則経験則に反する判断をしており、適正手続にも違反する極めて不当なものであった。特別抗告審において弁護人は、原決定、原々決定の誤りを明らかにすべく、特別抗告申立書、特別抗告申立補充書(1)~(10)、鑑定意見書等(弁1~4)を提出していた。


ところが、最高裁判所は、約2年半もの審理期間を費やしながら、いわゆる「三行半」の決定により、弁護人の主張や新証拠について何ら判断を示すことなく、弁護人の特別抗告を棄却したのである。


本決定は、検察官の主張、検察側の証拠のみを一方的に取り上げて採用し、弁護人の主張、弁護側の証拠を十分な根拠なく切り捨てた原決定、原々決定を無批判に認容し、科学的知見に基づいた判断を行っていない。また、本決定は、新旧全証拠の総合評価を行っておらず、白鳥・財田川決定にも違反するばかりか、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則にも反しており、到底是認できない。


申立人は、2018年8月12日に釈放されるまで、約18年間もの長期間にわたり身体を拘束されたものであり、速やかに再審を開始し、申立人に対して無罪判決が言い渡されなければならない。


弁護人は、直ちに第3次再審請求に向けた活動を行う予定であり、当連合会は、引き続き恵庭殺人事件の再審を支援し、再審開始、無罪判決の獲得に向けて、あらゆる努力を惜しまないことをここに表明する。




 2021年(令和3年)4月15日

日本弁護士連合会
会長 荒   中