いわゆる「販売預託商法」の全面禁止の提言に関する会長談話


消費者庁の特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会(以下「検討委員会」という。)は、本年8月19日、販売を伴う預託等取引契約は原則として禁止するべきであるとの検討結果を公表した。


特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下「預託法」という。)は、当時、我が国史上最大と言われた豊田商事事件を契機に1986年に制定されたものであるが、その後もいわゆる「販売預託商法」は、安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件等、我が国の大規模消費者被害の歴史に残る事件を次々と引き起こしてきた。そのため、法制度の抜本的な見直しが喫緊の課題となっている。


当連合会は、「販売預託商法」は金融商品取引法上の集団投資スキームに関する規制を潜脱しているという認識の下、隙間のない規制を及ぼすとの趣意で、同法の適用対象とすること(金融商品取引法の改正)、あるいは、同法と同等の規制整備をすること(預託法の改正)を提言してきた。検討委員会が「販売預託商法」の原則禁止を提言しその禁圧を求めたことは、当連合会の上記趣意と同一のものであり、これを機に法制度の見直しが進められることが期待される。


他方、近時の「販売預託商法」の被害事例においては、物品のみならず権利や役務等を取引対象とするものや、単純な預託とは言い難い形式を取るものも散見され、禁止対象となる「販売預託商法」を定義するに当たっては、これら類似商法にも適切な規制が及ぶよう留意する必要がある。また、隣接法令である金融商品取引法、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律及び不動産特定共同事業法等との適用関係にも留意した上で、これら諸法の共働によって、全体として隙間のない規制とすることが重要である。


当連合会は、検討委員会の提言を踏まえて、預託法の抜本的な見直しのための立法作業が速やかに進められることを強く求めるものである。


併せて、「販売預託商法」につき隙間のない規制を及ぼすため、金融商品取引法等関係諸法令についても、この機に見直し、改正その他必要な措置を講ずることを期待するものである。



 2020年(令和2年)12月9日

日本弁護士連合会
会長 荒   中