特定戦災障害者等に対する特別給付金の支給等に関する法律の早期制定を求める会長声明


太平洋戦争において、空襲や艦砲射撃あるいは沖縄地上戦により被害を受けた一般の民間戦災者に対しては、戦後75年を経た現在まで、何らの援護の措置も講じられていない。国の戦争行為の遂行によって生じた被害であることに鑑みれば、幸福追求権や平和的生存権の保障の観点から、国が何らかの補償措置を行う責務があるといえる。また、軍人・軍属等に限定された援護法が制定されていながら民間戦災者に対する措置がないことは、法の下の平等にも反する。


この間、当連合会は、1975年に開催した人権擁護大会において、上記のような理由から、民間戦災者に対する援護法制定に関する決議を採択し、2015年には内閣総理大臣等に対して空襲被害者等援護法の制定を求める要望書を提出し、2018年1月22日には法律の早期制定を求める会長談話を発表した。しかし、現在に至るまでこのような法律は制定されないままである。


このような状況下、超党派の国会議員で構成される空襲議員連盟は、本年10月27日、「特定戦災障害者等に対する特別給付金の支給等に関する法律案(仮称)」の要綱を確定し、各党の手続に付することを決定した。


この法律案要綱は、空襲等による民間戦災者に50万円の特別給付金を支給しようとするものであり、前文では、「戦後七十五年を迎えるに当たり、(中略)国としてその労苦に服いる」と立法の目的を明記している。また、支給対象者を、空襲等により身体の障害やケロイドを負った者のみならず、心理的外傷後ストレス障害を負った者にまで広げており、国籍条項も設けていない。認定手続については、厚生労働省に特定戦災障害者等認定審査会を置き、「医療、空襲等に係る歴史、障害者福祉等に関して優れた識見を有する者」を委員に任命するとしており、空襲等による被害に関する実態調査及び死亡した者への追悼の意を表す施設の設置も明記している。これらの規定は、民間戦災者の気持ちに寄り添うものであり、極めて適切な内容である。


生存している民間戦災者は既に相当高齢に達していることに鑑みれば、これらの人々に対する援護の措置は一刻の猶予もできないことは明らかである。


そこで、当連合会は、本年10月26日に召集された第202回臨時国会において、速やかに上記要綱に基づく法律案が上程され成立することを求める。



 2020年(令和2年)11月18日

日本弁護士連合会
会長 荒   中