「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(案)」に対する会長声明


報道によれば、自由民主党及び公明党は、生殖医療技術の利用に関し、基本理念、国等の責務及び国の講ずべき措置を定め、併せて第三者の精子又は卵子を用いた生殖医療技術により出生した子の親子関係に関する民法の特例を定めるための法案(以下「本法案」という。)をこの臨時国会に提出するとのことである。


当連合会は、これまで生命の誕生に関わる生殖医療技術の利用に関して、早急に法整備を行うことを求め、公的管理機関の設置による生殖医療技術の適正な利用を確保する制度整備、精子・卵子の提供者情報の管理、出生した子に対する情報アクセスの保障、出生した子の法的地位の安定を図る親子法制の整備などの必要性を提言してきた。これらに照らせば、法案提出によって法制度の議論を進めようとすることは評価するものであるが、本法案は、基本理念や基本的な制度基盤の整備について不十分なものであることから、以下の点を踏まえ、審議を十分に尽くすべきである。


第一に、基本理念では、出生した子どもについて、「心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮」が求められるとされるが、第三者の関わる生殖医療技術によって生まれた子の出自を知る権利などを含めた、子どもの人権の保障に欠けている上、障がいや疾病を有する子の出生自体を否定的に捉える懸念がある。また、精子・卵子の提供者の安全への言及がない点でも問題があろう。


第二に、本法案では、生殖医療技術の利用についての規制や具体的制度整備は、附則において検討事項として挙げられるにとどまり、2015年に本法案と同様の法案が検討されていた際に、公明党案で指摘された生殖医療技術の実施医療機関の登録制度さえ取り入れられていない。また、子どもの出自を知る権利や、親子関係の紛争回避の上で重要となる、生殖医療技術の利用に関する情報管理制度にも言及がない。これらは、行為規制全体の基盤をなすべきものであって、早急な整備が求められるところ、こうした制度の検討も先送りにすることは不十分である。


第三に、本法案が親子関係法制として定めようとする内容は、卵子提供を受け、分娩した女性が母となること及び夫の同意を得て、夫以外の精子の提供を受けて出生した子に対し、同意した夫が嫡出否認できないことのみにとどまり、出生した子と精子提供者の間の認知の問題などにも全く触れられていない。また、親子関係法制に関し、法制審議会において嫡出推定制度自体の見直しがなされている状況に照らしても、現時点で上記の点のみ定めることは意義に乏しく、拙速の感も否めない。


以上から、当連合会としては、本法案に対しては、少なくとも基本理念や基本的な制度基盤の整備について補うとともに、出生した子の意見も聴取するなど審議を十分に行うこと、並びに附則において予定する生殖医療技術に関する包括的な法整備の検討を早急に進めることを改めて求める。



 2020年(令和2年)11月12日

日本弁護士連合会
会長 荒   中