入管収容について国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会の意見を真摯に受け止め、国際法を遵守するよう求める会長声明
本年8月28日、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会(以下「作業部会」という。)は、第88回会期において、東日本入国管理センターで長期収容された外国籍の難民申請中の男性2名(収容期間はそれぞれ通算4年7か月以上と5年1か月以上。以下「通報者ら」という。)の個人通報に対し、2名の収容が恣意的拘禁に該当し、自由権規約9条等に違反するという意見(A/HRC/WGAD/2020/58。以下「本意見」という。)を採択した。日本の入管収容について作業部会が意見を採択するのは、今回が初めてである。
日本政府は、これまで入管収容に関し、法律にしたがって収容しているもので恣意的拘禁には当たらず、また、在留資格がない者に対し、送還の確保とともに、その在留活動を禁止する趣旨から、原則として収容がなされるべきであると主張してきた。
これに対し、作業部会は、恣意的とは「法に反して」と同列に扱うものではなく、より広範に解釈されるものとした上で、収容はあくまでも必要性、相当性の要件を満たす必要があり、最終的な手段と位置付けられるべきものであることを明確に述べた。また、作業部会は今回の収容について、通報者らが日本にそれぞれ13年あるいは30年という長い期間住んでいたという点を指摘し、彼らを収容する必要性、合理性があったのかを特に重視した。その上で、今回の収容は、必要性を個別に評価した上での例外的な最終的な手段でなければならないという基本原則に反すること、出入国管理に伴う無期限の収容は自由権規約9条(1)に違反すること、司法審査を受ける機会が与えられなかったことは自由権規約9条(4)に違反することを指摘して、恣意的拘禁に当たると結論付けた。
作業部会は、国連人権理事会から任命された独立の人権の専門家で構成され、テーマ別又は国別に人権状況を調査して人権理事会に報告することを任務としている、条約機関と並ぶ国連の重要な人権擁護メカニズムである特別手続の一つであり、その調査の一環として個人通報を受理している。また、本意見においては、拷問禁止委員会や人種差別撤廃委員会等の条約機関から10年以上にわたり入管収容の長期化や司法審査の欠如などについて繰り返し勧告を受けてきたことについても言及され、日本では入管収容に関して差別的対応が常態化しているとまで指摘された。条約機関からの度重なる勧告を軽んじるような態度を指摘されたことを、日本政府は真摯に受け止めるべきである。
折しも、収容及び送還に関する部分を中心に入管法改正が議論されているところ、伝えられるところによれば、改正案では、収容期間に上限を設けず、司法審査の機会も確保しないなど、本意見が明確に国際人権法違反であると指摘している点については改善される見込みがない。当連合会は、日本政府が本意見を真摯に受け止め、個人の救済と入管法改正を含む現在の入管収容制度の見直しに取り組むよう求めるとともに、日本政府が国際社会の一員として国際法を遵守するよう強く要請する。
2020年(令和2年)10月21日
日本弁護士連合会
会長 荒 中