弁護士費用保険(権利保護保険)制度創設20周年に関する会長談話



当連合会において、弁護士費用保険(権利保護保険)制度の運用を開始してから、本日で20年が経過する。


2000年6月17日、当連合会は、理事会で「権利保護保険に関する基本方針」を採択した。同方針に基づき、当連合会と協定を締結した保険会社の契約者・被保険者を対象に、弁護士を紹介する組織である「リーガル・アクセス・センター」を全弁護士会に設置した。そして、20年前の本日、日本で初めて協定保険会社から弁護士費用保険(権利保護保険)が販売され、本制度の運用が開始されるに至った。広く市民の司法及び弁護士へのアクセスを保障する方策の一つとして、先達が取り組んだ訴訟保険の研究が結実した時であった。


本制度の運用開始以降、その取扱件数は飛躍的に増加し、2001年度にはわずか3件であったものが2019年度には4万件を超えるに至った。また、協定保険会社(共済協同組合及び少額短期保険を含む。)は本日時点で19社となっている。併せて、本制度は交通事故における民事事件を中心に発展を遂げ、近年においては取り扱う保険商品も多様化してきた。交通事故における刑事事件、事故以外の離婚・労働・借地借家等のいわゆる一般民事事件、中小企業・個人事業主の事業活動における事件、インターネット上のトラブルに関する事件の保険商品に拡大してきている。


保険による弁護士へのアクセスの社会的認知とともに取扱件数が増加する中で、安定的な制度維持のために、全国の弁護士会との連携・協働による紹介弁護士の信頼性向上のための取組を実施してきた。さらに、2018年1月には、弁護士費用に関する紛争を解決するADR機関を設置し、その運営を開始した。このように本制度の信頼性向上のための取組を継続する中で、弁護士会が協定保険会社を介して弁護士を紹介するという諸外国に類を見ない制度が、我が国において着実に根付きつつある。


当連合会は、引き続き司法アクセスの拡充のために、日本社会のあらゆる人々の権利を費用面から支える保険の利用を通じ、市民・企業、弁護士、協定保険会社の三者にとってさらに利用しやすく信頼性の高い制度となるよう、全力を挙げて取り組む決意であることを、ここに改めて表明するものである。





 2020年(令和2年)10月1日

日本弁護士連合会
会長 荒   中