被災者生活再建支援法における被災者生活再建支援金の支給対象を、半壊、準半壊及び一部損壊世帯に拡げることを求める会長声明



本年7月30日付けで、内閣府及び全国知事会の「被災者生活再建支援制度の在り方に関する実務者会議」から、検討結果報告(以下「検討結果報告」という。)が公表された。


被災者生活再建支援法は、住宅が全壊した世帯(第2条第2号イ)、住宅を解体し、又は解体されるに至った世帯(同号ロ)、住宅が居住不能のものとなり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれる世帯(同号ニ)、大規模半壊世帯(同号ホ)(損害割合40~50%未満)を被災世帯と定め、被災者生活再建支援金(以下「支援金」という。)の支給対象としており、住宅が半壊(同20~40%未満)、準半壊(同10~20%未満)又は一部損壊(同10%未満)にとどまる世帯については支援金の支給対象としていない。この点、検討結果報告では、「損害割合が30%台の半壊世帯については、被災者生活再建支援法の対象とする『自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者』に該当し、同法の対象とすることが考えられる。」とされた。政府も同様の方針で支援の対象を拡大することを検討しているとのことである。


当連合会は、2011年7月29日付け「被災者生活再建支援法改正及び運用改善に関する意見書」(以下「2011年意見書」という。)において、同法を改正し、支援対象を拡大することを求めてきたところであり、支援対象となる被災者の範囲を拡大する方向で検討が進められていること自体は評価する。


ただし、内閣府の定める「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」によれば、水害による第1次調査における浸水深による判定基準において、床上1メートル未満の浸水を半壊としているところ、半壊のうちの一定損害割合のものだけを支援対象とすると、損害割合の調査・判定が複雑化してしまい、これを担う自治体の負担が著しく増加するとともに、早期に判定を受けられないことによる被災者の不利益も大きくなることが懸念される。


そもそも、近年頻発している豪雨災害や台風災害による浸水被害においては、大規模に至らない半壊、準半壊、一部損壊であっても、相応に高額な補修費用がかかるのが通常であるから、一定の損害割合によって画一的に支援金の給付の有無を線引きすべきではない。


よって、当連合会は、国に対し、被災者の生活再建のため、同法における支援金の支給対象について、一部損壊を含む全ての被災した世帯にまで拡げることを求める。


あわせて、当連合会は、2011年意見書記載のとおり、適用対象地域を自治体単位で指定せずに地域にかかわらず同一の災害で被害を受けた世帯等の支援を行うことや支援金金額の増額等についても引き続き適切な対応を求める。




 2020年(令和2年)9月3日

日本弁護士連合会
会長 荒   中