新型コロナウイルス感染症による緊急措置として、労働者が失業したものとみなして失業給付を受給できる措置を講じるとともに、雇用調整助成金の迅速な支給拡大を求める会長声明



政府は、本年4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、7都府県を対象に緊急事態宣言を発出し、同月16日にはこれを全国に拡大、更に5月末日まで延長した。これにより、国民生活全体に大きな影響が及んでいるが、特に、リーマンショックをはるかに上回ると言われる経済活動の停滞の中で、事業継続が困難となる事業者が続出し、それに伴って失業者が急増するなど今後の雇用環境の悪化が現実化しつつある。


新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中で、事業自体が失われたり、労働者が解雇されるなどして雇用契約関係から離脱してしまうと、その回復には多大な時間と労力を要することになる。政府は、感染症収束までの間、事業者の経営状態悪化に伴う従業員の解雇を回避することに主眼を置いた既存の制度の応急的かつ弾力的な活用を思い切ってすべきである。


まず、事業の継続による雇用の場の維持や雇用関係を維持する緊急措置が必要である。この点、激甚災害時に適用される「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」25条の「雇用保険法による求職者給付の支給に関する特例」は、事業所が災害を直接の原因として休止・廃止したため休業を余儀なくされ、労働者に休業手当を含む賃金を支払うことができない場合に、実際に離職していなくても、あるいは再雇用を約した一時的な離職の場合であっても、労働者が失業したものとみなして失業給付を受給できる制度である。


政府は、この特例措置にならって、今回の緊急事態宣言に伴う事業の休止等にも同様の措置をとり、感染症収束までの間、実際に離職していなくても労働者が失業給付を受給できるよう措置を講じ、事業再開を目指す事業主による雇用の維持を図るべきである。


また、雇用調整助成金は、事業主が雇用維持のために従業員に休業手当を支払った場合に、その一部を助成する制度であり、今こそ十分な活用が期待されている。政府も令和2年4月1日から6月30日まで(緊急対応期間)に限り特例措置として、対象者の拡大(雇用保険被保険者でない労働者を含める。)、被保険者期間の要件の撤廃、助成率の引上げ(中小企業では3分の2から5分の4へ、解雇等を伴わない場合は10分の9から更に10分の10へ。)を行った。


しかし、制度自体がいまだ十分に周知されておらず、事業主が休業手当を支払った後に助成金が支給される仕組み(後払い方式)となっていることから、添付書類の作成手続が煩雑で、ハローワークの人員体制も追い付いておらず、決定・支給に至るケースがいまだわずかな件数にとどまっている。助成額の上限も労働者1人当たり1日8330円にとどまっている。これでは、緊急時の経営破綻と従業員の解雇回避策として機能しているとは到底言えない。政府もオンライン申請化や手続の簡素化、上限引上げを検討しているが、この際、中小零細事業主でも簡単に申請できるよう手続のさらなる大幅な簡略化・迅速化を進めるとともに、助成額上限の大幅な引上げを行った上で、制度の一層の周知を図り、ハローワークの人員拡充、応援体制の構築等事務処理体制を抜本的に強化するべきである。


当連合会は、以上のとおり、緊急事態宣言及びその影響による雇用情勢の悪化に対して、雇用社会を維持するために政府に対して抜本的な対策を早急にとることを強く求めるものである。


 2020年(令和2年)5月7日

日本弁護士連合会
会長 荒   中