刑事裁判の期日延期等に関する会長声明




令和2年4月7日、日本政府により、新型コロナウイルス感染症を対象とする新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、7都府県を対象とする緊急事態宣言が発令された。その後、道府県独自の緊急事態宣言の発令もなされている。


これを受け、各地の裁判所(7都府県以外の地域も含む)において、同年5月6日までに指定されていた公判期日の多くが延期されている。


新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止措置を講ずる必要性があることに異論はない。しかしながら、感染拡大防止の観点を重視するあまり、必要最小限度を超えた被告人の人権制約がなされてはならない。


迅速な裁判を受ける権利(日本国憲法37条1項)は、被告人の身体拘束の有無にかかわらず最大限尊重されなければならない基本的人権であるが、特に身体拘束されている被告人にとっては、その長期化により被る不利益は甚大である。中でも、延期されていなければ、無罪、刑の全部の執行猶予や罰金の判決が宣告されていた場合は、公判期日の延期は不要かつ不当な身体拘束の長期化にほかならず、到底許されるものではない。


さらに、被告人が身体拘束されている刑事収容施設で感染者が出た場合には、当該施設内で集団感染が発生し、被告人の生命身体への危険が生じかねない。実際に、刑事収容施設の職員や被収容者が新型コロナウイルスに感染したとの報道もある。


そこで、裁判所に対し、次の3点を求める。


1 身体拘束中の被告人についての公判期日の延期は、事案に応じて、弁護人の意見を聴いて慎重に行うこと。やむを得ず公判期日を延期する場合には、勾留の執行停止、勾留の取消しや保釈の許可を柔軟に行うこと。


2 身体拘束の継続が避けられない場合には、延期後の公判期日をできるだけ早期に指定すること。


3 公訴事実に争いがなく、執行猶予判決が見込まれる事件では、第1回公判期日において判決の宣告まで行う等、被告人の身体拘束が長引かないよう最大限の配慮を行うこと。


 2020年(令和2年)4月15日

日本弁護士連合会
会長 荒   中