司法試験の実施延期に関する会長談話




2020年(令和2年)4月8日、司法試験委員会は、令和2年司法試験及び司法試験予備試験の実施時期を延期することを決定した。


今回の措置は、本年4月7日に政府が緊急事態宣言を発令したことを踏まえ、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために決定されたものである。かつてない決定であるが、公衆衛生の保持と受験生の生命身体の安全を確保する観点からは、やむを得ない判断といえる。


もっとも、司法試験委員会は、延期後の実施時期等について「可能な限り速やかに法務省のホームページ上において公表する予定」と示すのみで、具体的な時期等を明らかにしていない。


確かに、延期後の実施時期等を決するには、試験会場や採点者の確保等、解決すべき問題が少なからず存在する。司法修習の実施時期等、関係機関との調整も不可欠であり、司法試験委員会としても実施延期と同時に決定することは困難であったと思われる。


しかし、司法試験は、法曹になろうとする情熱をもった者たちが自らの資質と学修の成果を懸けて挑む試験であり、受験生にとって人生の一大事である。にもかかわらず、延期後の実施時期が未定のままでは、受験生も挑戦の意欲を維持し続けることが難しい。このことは、有為な人材が法曹志望を断念する原因となりかねず、ひいては社会の人的インフラが損なわれることにつながりかねない。


そこで、当連合会は、司法試験委員会に対し、受験生が安心して試験の準備に取り組めるよう、速やかに延期後の実施時期等を明示することを求める。また、当連合会としても、採点期間の短縮等、試験の円滑な実施のために必要な事項について積極的に協力する所存である。


当連合会は、未曽有の緊急事態の中にあって法曹を志す情熱を失わず、体調の維持に努めて来たるべき試験に備える受験生に対し、心からエールを送る。


 2020年(令和2年)4月15日

日本弁護士連合会
会長 荒   中