民法の一部を改正する法律等の施行についての会長声明




本年4月1日、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)及び同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(同年法律第45号)(以下、両法律を一括して「本改正法」という。)が施行された。


本改正は、明治時代に制定された民法財産法のうちの債権関係分野(第3編「債権」が中心となるが、それに限らず第1編「総則」なども含む)について、我が国の社会・経済状況への対応を図り、かつ、この間の判例法理等の集積を成文化することにより、市民一般に分かりやすいものとするためになされたものである。約款取引に関する規律を定型約款として初めて明文化し、また、消滅時効について時効期間や時効障害事由を見直すなど、市民生活を守り、社会の安定を維持するための重要な改正がなされている。また、個人保証人の保護のための根保証の規律の拡大、事業用貸金債務に関する保証意思宣明公正証書の義務付け、各種情報提供義務規定の新設などの点は、個人保証に依拠しない取引社会の構築に向けた漸進的な改正と評価することができる。


さらに、売買契約や請負契約における契約不適合責任の規定等は、これまでの伝統的解釈の根本的転換を迫るものとなっており、本改正法の下における実務運用を早期に定着させる必要がある。また、訴訟上行使される可能性が高い債権者代位権や、訴訟上の行使が義務付けられている詐害行為取消権などは、本改正法施行後、程なくして、同法に基づく訴訟が係属することとなる。裁判所及び弁護士が互いに協働し、本改正法に従った訴訟の円滑な遂行を図らなければならない。


その他にも、本改正法の改正項目は200を超えている。本改正法の施行は、まさに新しい民法(債権法)のスタートである。本改正法が活きた法として社会に定着するためには、今後の実務における解釈、運用が重要である。民法及びこれに関連する特別法の運用が円滑になされ、市民生活や事業活動に混乱をもたらすことがないように、弁護士のみならず、法律関係者全てが、全力を尽くさなければならない。当連合会は、市民に最も身近に寄り添う法律実務家である会員とともに、市民のニーズが本改正法の下での実務に的確に反映されるよう努め、もって同法の円滑、適切な運用と社会への定着が図られるよう全力で取り組む所存である。


 2020年(令和2年)4月1日

日本弁護士連合会
会長 荒   中