公益通報者保護法改正案に関する会長声明




本年3月6日、公益通報者保護法の一部を改正する法律案が閣議決定され、今国会に上程された。公益通報者保護法(2006年4月施行)については、施行から5年後見直しが附則に明記されていたにもかかわらず、これまで改正がなされてこなかったものであり、法改正の実現は喫緊の課題である。


本法律案は、通報者の範囲への退職者及び役員の追加、行政機関への通報要件の緩和、行政機関以外の外部への通報の特定事由による保護要件の追加、従業員数が300人を超える事業者に対する内部通報体制整備の義務付け、通報行為に伴う損害賠償責任を負わないことの明文規定の創設等の各論点について、内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会報告書(2018年12月27日)で示された方向性に概ね沿った内容となっており、全体として通報者の実効的な保護を一歩前進させるものとして評価できる。


公益通報は、健全な事業活動を確保して消費者にとって安心・安全な社会を構築し、また、企業が消費者・労働者からの信頼の下に国際競争力を持つために必要不可欠な仕組みと言える。当連合会は、通報者が真に保護されるための実効的な法律となるよう、早期に本改正が実現されるよう求める。


併せて、本法律案では、通報者に対して不利益取扱いをした事業者に対する行政措置や刑事罰の導入が見送られたほか、不利益取扱いに関しての立証責任の転換、通報者の範囲に取引先事業者等を含めること、通報を裏付ける資料の収集行為の刑事責任免責など、通報者保護のために重要な規定が盛り込まれていないため、これらの点についても、立法化の過程で十分な審議がなされ、今後の課題として引き続き検討されることを求める。



 2020年(令和2年)3月18日

日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎