世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話



2019年12月17日、世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、2019年の世界各国の男女平等の度合いを指数化した「ジェンダーギャップ指数」を発表した。日本は153か国中121位と前年の110位から更に大きく順位を下げ、過去最低であった一昨年の114位をも下回った。主要7か国(G7)中最下位であるのみならず、アジアの主要な国よりも下位である。

 

ジェンダーギャップ指数は、女性の地位を、経済、政治、教育、健康の4分野で分析し、ランク付けをしている。日本は、経済分野が115位、政治分野が144位、教育分野が91位、健康分野が40位であり、前年に比べ経済分野と健康分野がほぼ横ばいであったものの、政治分野、教育分野は大幅に順位を下げた。  


経済分野は、男女間の賃金格差、管理職の男女差、専門職・技術職の男女比のスコアがいずれも100位以下である。中でも管理職の男女差は131位であり、順位が上がらない要因となっている。


また、教育分野について、以前から順位が低かった大学など高等教育への就学率が前年の103位から108位へと更に順位を下げた。男女平等は教育分野でも停滞ないし後退している。


最も深刻なのが政治分野である。昨年も4分野の中で最も低い順位であったが、そこから更に19も順位を下げ、遂に世界のワースト10に入った。国会議員の男女比では135位、閣僚の男女比では139位といずれも順位を下げている。昨年7月に実施された参議院議員通常選挙は、政党に男女の候補者数を均等にするよう促す「政治分野の男女共同参画推進法」施行後の初めての国政選挙であったが、与党の女性候補者比率が自民党14.6%、公明党8.3%と低かったことなどもあり女性当選者は増えなかった。女性の政治参画は、あらゆる分野における女性の地位向上のための必須条件である。さらに、女性の政治参画なくして、社会の多様性を尊重し、日本の民主主義を発展させることは不可能であろう。女性議員数、女性閣僚数を増加させることは喫緊の課題であり、もはや一刻の猶予もない。政党にとっての責務でもあり、各政党は女性候補者の増加に向けた具体的取組を進める必要がある。そして、今後も状況が改善しない場合にはクオータ制の法制化なども検討すべきである。


当連合会は、日本の置かれている状況を懸念し、ジェンダーギャップ指数に対し毎年談話を発表しているが、状況は一向に改善されない。しかしながら、日本社会の男女不平等状況は国際的な信用さえ失墜するレベルであり、もはや放置することは許されない。


当連合会は、日本政府に対し、日本社会の現状を直視し、職場における男女格差の解消のため女性の活躍を更に推進する施策の実施にとどまらず、女性の政治参画の促進や高等教育機関における男女格差の解消を喫緊の重点課題と位置付け、より実効性ある具体的措置、施策を早急に講じるよう強く要請する。



 2020年(令和2年)2月7日

日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎