所得税法の「寡婦(寡夫)控除」規定の改正を求める会長声明

婚姻歴のない、いわゆる「非婚のひとり親」に対する、所得税が軽減される「寡婦(寡夫)控除」の適用拡大をめぐり、昨年の与党税制協議に引き続き、今年度もその協議が山場を迎えつつある。
 

当連合会は、2014年1月16日付けで「arrow『寡婦控除』規定の改正を求める意見書」を公表し、所得税法81条1項(「寡婦(寡夫)控除」)によって所得控除を受けることができる「寡婦(寡夫)」の定義を変更し、「婚姻歴のないひとり親」にも適用されるよう、同法2条1項30号及び31号を改正すべきであるとした。
 

すなわち、所得税法上の「寡婦(寡夫)控除」は、婚姻関係のある配偶者との死別や離婚したひとり親のみが対象であり、等しくひとり親でありながら、非婚のひとり親は、婚姻歴がないため同控除が適用されず、その分重い税負担が課せられたり、保育料算定などでも経済的不利益を受ける。その結果、非婚のひとり親は経済的に困窮し、子どもの貧困も解消できない事態が広がっている。
 

このような非婚のひとり親の経済的困窮を直視し、これまで、独自に、非婚のひとり親に「寡婦(寡夫)控除」を「みなし適用」をして、保育料算定や公営住宅家賃の減免等の経済的支援を行う自治体が広がり、さらに、「みなし適用」を行う政令改正によって全国的に経済的支援策は広がってきたところである。
 

しかし、各自治体の現場や当事者からは、これら格差の根本となる所得税法の改正を求める意見が相次いでいる。
 

昨年の平成31年度税制改正に当たり、与党内において、寡婦(寡夫)控除の拡大に向けた協議がなされたが、所得税法の改正合意には至らず、同年度税制改正大綱における検討事項に、「婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親に対する更なる税制上の対応の要否等について、平成32年度税制改正において検討し、結論を得る」ことが明記された。
 

ひとり親世帯に等しく経済的支援を行い、子どもの貧困を解消するためには、上記意見書で指摘したように、「寡婦(寡夫)控除」規定が非婚のひとり親にも適用されるように所得税法を改正することが根本的な解決方法であり、当連合会は、来年度の税制改正において、所得税法の「寡婦(寡夫)控除」規定の改正がなされることを求める。



 2019年(令和元年)11月28日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎