消費者庁及び内閣府消費者委員会設置10年を迎えて消費者行政の一層の充実・強化を求める会長談話

消費者庁及び内閣府消費者委員会(以下「消費者委員会」という。)が2009年9月に創設されて10年を迎えた。


消費者庁は従来の縦割りの行政の枠組みを超えて、消費者の権利・利益の擁護及び増進を図るべく、消費者行政を一元化した新たな組織として創設された。また、消費者庁や他の省庁を監視する組織として、民間委員から構成される消費者委員会が創設され、これまで施策実現のために極めて重要な地位を占めてきた。


この10年において、消費者庁は、省庁を横断する司令塔の機能を発揮し、業種を問わず不当表示を防止する景品表示法における課徴金制度の導入や食品表示ルールの一元化を図る食品表示法等の立法を果たした。また、集団的な消費者被害の回復を図るため、消費者裁判手続特例法の制定に努め、その他消費者契約法、特定商取引法の改正等、立法を通じて、まさに「消費者を主役とする政府の舵取り役」を果たしてきたのである。


当連合会は、このような消費者庁・消費者委員会の10年間の果たしてきた役割を高く評価し、一層の機能拡充を期待するものである。


他方、課題も山積している。ことに地方消費者行政は、2018年に国の交付金が縮減され、地方自治体の負担が過重となり、体制整備が遅れている。地方公共団体における見守りネットワークの構築等による高齢者の被害防止も、政策目標に遠く及んでいない。また、大規模被害を繰り返し発生させる預託商法に対応する法の運用や改正、ネットオークションなどのプラットフォーム事業の急速な拡大に伴う消費者保護の法制度の整備等、新たな課題への果敢な取組が求められている。これらの課題に対応するためには人的・財政的な大幅な拡充が必要であり、当連合会としても消費者庁・消費者委員会を後押しして「消費者の人権」の確立に一層力を傾注する所存である。


また、消費者行政の新たな課題に関する政策の分析・研究・実証実験等のプロジェクトは、徳島県に拠点を設置して取り組まれているが、その取組の成果を関係省庁及び各地方公共団体の施策として展開するためには、消費者庁本庁が、政府全体の消費者政策を推進する司令塔機能を果たすことが不可欠であり、一層の体制及び機能強化が求められる。


消費者庁・消費者委員会設置10年の節目に当たって、この間の消費者行政の課題を検証し、消費者庁・消費者委員会及び国民生活センターを中心とする我が国の消費者行政を一層充実・強化することを求めるとともに、当連合会も課題解決に向けて思いを新たにするものである。


 2019年(令和元年)9月1日

日本弁護士連合会
   会長 菊地 裕太郎