入国管理センターにおける被収容者の死亡事件及び再収容に関する会長声明
本年6月24日、大村入国管理センターにおいて、日本国籍の子の父親であり、3年7か月もの長期間にわたって収容されたことに抗議するハンガーストライキを行っていた40歳台のナイジェリア人男性が意識不明になり、病院に搬送されたが死亡したという事件が発生した。2007年以降に出入国管理施設で被収容者が死亡したのは、本件を含めて14人に上っている。
このような中、本年7月22日には、2年8か月及び2年5か月にわたり収容され、同様にハンガーストライキを行って著しく体重を減少させるなどしていたという外国人2名が、上記の死亡事件発生後に仮放免を受けたものの、2週間後に仮放免の期間延長のために東京出入国在留管理局に出頭した際、期間延長が認められず、再び収容されたという事態が生じた。その後も、同様の状況で仮放免された者が2週間で再収容されている状況にある。
当連合会は、収容施設における死亡事件については、通院・入院等の必要のある者について仮放免を行うことを徹底することや、死亡事故の発生原因の徹底的な調査及び公表、具体的な再発防止策の策定、適切な医療体制の構築等を繰り返し求めてきたところであるが、収容をめぐる状況はむしろ悪化している。
退去強制における収容については、憲法34条や自由権規約9条の恣意的な拘禁の禁止、拷問等禁止条約16条の非人道的な取扱いの禁止の観点から、収容自体を退去強制の確保に必要な最小限の場合にのみ行うこととし、必要性や相当性のない場合に収容をしてはならないことを求めてきた。2018年12月の国連総会において、日本も賛成して採択された移民保護の国際協定である「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」においても、収容が恣意的でなく、必要性、比例性と個別の評価に基づき最も短期間に行われることを確保することや、収容を最終手段としてのみ用いることが各国政府に求められている。今般、上記のとおり、再び死亡事件が発生したこと、さらには、長期間にわたって収容されていた者が仮放免を受けた後のわずか2週間後に再び収容されるという事態が生じていることは、極めて遺憾であると言わざるを得ない。そこで、当連合会は、上記の死亡事件について、入国者収容所等視察委員会など第三者機関により徹底的かつ迅速な調査を実施し、その調査結果を公表した上、具体的かつ実効的な再発防止の措置を速やかに講じることを再度強く求める。
また、仮放免を受けた後の2週間で再収容された上記2名を含め、再収容された者について、速やかに仮放免するとともに、今後、仮放免が許可された者について、再収容の必要性・相当性を厳格に判断し、これらが認められない限り再収容をしないよう強く求める。
2019年(令和元年)8月8日
日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎