「豊川事件」再審請求棄却決定に関する会長声明

本日、名古屋高等裁判所刑事第1部(山口裕之裁判長)は、田邉雅樹氏が申し立てた、いわゆる豊川事件について、再審請求を棄却する旨の不当決定を出した(以下「本決定」という。)。当連合会は、本決定に対し、無辜の救済という再審法の理念に反するものとして抗議するとともに、これまで再審を闘い続けて来た田邉氏に対して、改めて敬意を表する。 


豊川事件は、2002年(平成14年)7月、愛知県豊川市で発生した幼児誘拐殺人事件である。翌年4月、田邉氏は、任意同行を求められて取調べを受け、自白して逮捕されたが、公判では一貫して無実を訴え、2006年(平成18年)1月、名古屋地裁は無罪判決を言い渡した。しかし、検察官控訴により、名古屋高裁は逆転有罪判決を出し、上告棄却によって懲役17年が確定した。田邉氏は、当連合会の支援の下、2016年(平成28年)7月、再審請求を申し立てた。  


本件の確定判決は、無罪判決を言い渡した第一審と同様に、直接の物的証拠はなく、状況証拠は田邉氏と犯人を結び付けるものではなく、任意性と信用性に疑問のある自白調書しかないという脆弱な証拠に支えられたものであった。  


本件再審請求では、開示された事件当時の海流データに基づく逆漂流予測、繊維付着実験、供述心理鑑定等、自白が客観的事実と矛盾する33点の新証拠を提出した。


しかるに、本決定は、弁護団の度重なる要求にもかかわらず、証人尋問を行うことなく、進行協議さえ拒否して出されたものである。そして、決定理由を見ても、弁護団が提出した新証拠を真摯に検討した形跡は伺えず、充分な審理を尽くしたものとは言えない。


当連合会は、豊川事件の再審開始と、田邉氏の無罪が確定するまで、引き続き支援を行い、あらゆる努力を惜しまないことをここに表明する。


        

 2019年(平成31年)1月25日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎