「恵庭殺人事件」第2次再審請求即時抗告棄却決定に関する会長声明

札幌高等裁判所(登石郁朗裁判長)は、本年8月27日、いわゆる恵庭殺人事件の第2次再審請求の即時抗告事件(申立人大越美奈子氏)について、即時抗告を棄却する決定をした(以下「本決定」という。)。


恵庭殺人事件は、2000年(平成12年)3月16日に発生した殺人、死体損壊事件である。被害者の勤務先の同僚であった申立人に本件の嫌疑がかけられ、逮捕時からの一貫した無罪主張にもかかわらず、確定審においては、情況証拠のみで、申立人に対して懲役16年の有罪判決が言い渡された。


第2次再審請求審において、弁護人は、被害者の死因は窒息死ではないとする法医学鑑定、被害者の遺体は最初うつ伏せで焼損された後に仰向けで焼損されたとする鑑定、灯油10リットルを人体にかけて燃焼した場合に被害者の遺体のような9キログラムの体重減少は生じ得ないとする鑑定等、多数の新証拠を提出した。


請求審の札幌地方裁判所は、弁護人が提出した鑑定等の新証拠について事実の取調べを行ったにもかかわらず、不当にも新証拠の証拠価値を否定し、本年3月20日に再審請求棄却を決定した。


弁護人は、同月23日に即時抗告を申し立て、その後、札幌高裁に対し、被害者の遺体の焼損状態や10リットルの灯油による焼損可能性に関する即時抗告申立補充書、証拠開示命令申出書を同年7月27日までに提出し、さらに即時抗告申立補充書、作成中の新たな鑑定意見書等を今後提出する予定である旨を告知していた。


ところが、札幌高裁は、突如として、本決定を行ったものである。


本決定は、申立人及び弁護人から主張立証の機会を奪い去ったものであり、審理不尽であることは明らかであって、適正手続を保障した憲法31条、再審について審理を尽くすことを求めた財田川決定に違反するものである。


申立人及び弁護人は、本年9月3日、最高裁判所に特別抗告を申し立てた。申立人は、本年8月12日に釈放されるまで、約18年間もの長期間にわたり身体を拘束されたものであり、速やかに再審を開始し、申立人に対して無罪判決が言い渡されなければならない。


当連合会は、引き続き恵庭殺人事件の再審を支援し、再審開始、無罪判決の獲得に向けて、あらゆる努力を惜しまないことをここに表明する。



  2018年(平成30年)9月10日

日本弁護士連合会      

 会長 菊地 裕太郎