生活保護世帯が受給する平成30年7月豪雨災害における義援金の収入認定に関する会長声明
本日、平成30年7月豪雨災害などで被災した人に交付される義援金を差押禁止にする「平成三十年特定災害関連義援金に係る差押禁止等に関する法律」が成立した。言うまでもなく義援金は、市民等の善意を原資として被災者の生活基盤の回復等のために支給されるものであり、債権者の債権満足に充てるべきものではないから、当連合会は、これまでの大規模災害において義援金差押禁止措置を度々求めてきた。同法の成立は被災者の生活再建にとって不可欠の措置である。
それに加えて、生活保護を受給する被災者については以下のとおり格別の配慮が必要である。
すなわち、生活保護を受給する被災者の中には、義援金を受領した結果、収入認定がなされることにより、生活保護費の減額や停止がされることを懸念し、義援金の受領を躊躇する傾向が見られる。
しかしながら、前に述べた義援金の意義に鑑みても,義援金受領によって最後のセーフティーネットといえる生活保護費が減額ないし停止され、ひいては生活保護を受給している被災者の生活再建が困難となっては、義援金や生活保護制度の趣旨に反する。この点に関し、厚生労働省は、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生事務次官通知。以下「通知」という。)において、「臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって、社会通念上収入として認定することが適当でないもの」については収入として認定しないことを定めている。しかし、この点が生活保護利用者や関係者に周知されなければ、生活保護を受給する被災者が義援金の受領を躊躇することとなりかねないため、かかる通知の内容を十分に周知することが必要である。
そこで、当連合会は、国に対し、生活保護制度において、通知を踏まえ、義援金につき収入認定することのないよう求めるとともに、被災者が安心して義援金を受領できるよう被災者への周知を徹底することを求めるものである。
2018年(平成30年)7月20日
日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎