憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話


日本国憲法が施行されてから、本日で71年目の憲法記念日を迎えました。 


日本国憲法は、基本的人権が尊重された平和な社会を築くことを目指し、国政の在り方を最終的に決定する権利は国民が持つこと、すなわち国民主権こそが政治の大原則であるとしています。国民が国政に関する選択をするためには、その前提として選択にかかる情報を知ること、知る権利が保障されていることが不可欠です。山登りの道しるべとして磁石や地図が必要なように、国民主権にとって政治選択の道筋を指し示す備えが必須です。それは、情報公開と公文書管理です。


ところが、昨今、これらの国民主権を支える制度が揺らいでいるのではないかと思わざるを得ない出来事が次々に起きています。


国有財産の売却に関する公文書が改ざんされていたことが発覚しました。「ない」とされた自衛隊の海外派遣の日報が存在しその存在が隠蔽されていたことも明らかになりました。安保法制の適用・運用を憲法の観点から検討する機会が奪われたのです。民主制の政治過程そのものが傷つけられたもので、誠に憂慮すべき事態です。


今春、自由民主党で憲法改正の議論が進められ、自衛隊の明記や緊急事態などの4項目について改正の方向性が示されました。憲法改正をめぐるこれからの議論は、私たち国民の権利と自由に影響する大変重要な問題です。憲法改正の内容と意味を考え理解を深めるために、当連合会は、その課題や問題を国民の皆様に分かりやすく提示していきます。


また、憲法改正の手続が公正に行われるためには、私たち国民が偏りのない情報に接する必要があります。有料意見広告放送の在り方を検討するなど、憲法改正手続の見直しがなされるべきです。


憲法記念日に当たり、改めて日本国憲法が国民主権を掲げている意義を確認することが大切です。


当連合会は、憲法改正の議論を含め、日本国憲法の役割や意義を考える活動を続け、皆様とその認識を共有していきたいと存じます。



2018年(平成30年)5月3日
   日本弁護士連合会      
会長 菊地 裕太郎