公文書改ざんの再発防止を含む適切な公文書管理の徹底を求める会長声明

本年3月12日、民間への国有地売却に関する決裁文書14件について、国有地の貸付け及び売却に至る交渉等の経緯に関する部分に削除等の改ざんがあったことが財務省の報告により明らかになった。また、本年4月3日、存在しないとされていた自衛隊のイラク派遣の日報が存在し、その存在がほぼ1年間防衛大臣に報告されていなかったこと、さらに4月9日には、同様に存在しないとされていた自衛隊の南スーダン派遣の日報も存在していたことが明らかとなった。これら公文書の改ざん及び公文書の存在の隠蔽に共通するのは、公文書管理法の想定を超えた違法な公文書の管理の実態である。

公文書管理法は、第1条において、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であることに鑑み、「国民主権の理念」にのっとり、「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的」とし、第4条において、「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程」をも合理的に跡付け、又は検証することができるよう、文書を作成することを義務付けている。ここで想定されていることは、他者による事後検証を可能にするための記録の作成である。そのような記録が作成されてこそ、行政の恣意的運用を抑制することができ、将来の人々が過去を振り返ったとき、過去に学び、将来の行政に生かすことができるのである。この観点からすれば、今回の公文書の改ざんは、公文書作成の意義を没却するものであり、歴史の改ざんにもなり得る行為である。また、公文書の存在の隠蔽は、記録が作成されたこと自体を国民から覆い隠し事後検証を不可能にする行為である。いずれの行為も、公文書管理法の理念である国民の主権行使を阻害することになりかねず、民主主義の否定である。


当連合会は、公文書管理をめぐって、これまで、そもそも「行政文書」(公文書)を作成しない、文書を作成しているのに公文書扱いしない、廃棄した扱いにするなどといった問題について、適切な公文書管理の徹底を求める「施行後5年を目途とする公文書管理法の見直しに向けた意見書」(2015年12月18日付け)を始めとする意見書や会長声明を発してきた。そこで繰り返し指摘してきたのは、行政機関から独立した第三者機関の設置と公文書管理法の改正である。


今回の事態に対して行うべき対応も同様である。再発防止のためには、まず独立した第三者によって改ざんや隠蔽の事実や経過を調査し、これらを防止できなかった原因を明確にする必要がある。そして、既に国会においても再発防止のための法改正の必要性について議論され始めているが、電磁的記録による公文書の作成、管理方法を検討し、必要な公文書管理法の改正を行うとともに、恣意的な文書作成や管理が行われないようにするための制度の新設も検討し、公文書に対する国民の信頼を取り戻す必要がある。


よって、当連合会は、国に対し、今回の公文書改ざん等の問題の再発防止に向け、独立した第三者による速やかな事実関係の調査及び原因究明を行うよう求める。また、電磁的記録による文書の作成や管理に関する規定の新設を含めて、公文書管理法の改正を行い、さらに、専門的な見地から独立の判断により公文書全体を統括し、各行政機関に対して公文書の管理に関する報告及び資料の提出を求める権限並びに立入調査などの権限を有する公文書管理庁を創設するなど、適切な公文書管理を確保する体制を構築することを求める。



2018年(平成30年)4月20日

日本弁護士連合会      

 会長 菊地 裕太郎