公文書の安易な廃棄を防止し電子情報も含めた公文書管理の徹底を求める会長声明


陸上自衛隊の南スーダンPKO派遣部隊の日報及び学校法人「森友学園」への国有地売却経緯に関する書類については、いずれも行政文書であるものの保存期間が1年未満であることを理由に廃棄したという政府説明がなされている。しかし、いずれも国政上重要な情報であり、これらの文書が行政機関の判断によって極めて短期間の保存期間を設定され廃棄された事態は、公文書の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)の趣旨に反することが指摘され、その内容や存否について国会で取り上げられ活発な議論がなされている。


公文書管理法では、第1条において、公文書が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であることに鑑み「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的」とし、第4条において、「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程」をも合理的に跡付け、又は検証することができるよう、文書を作成することを義務付けるとともに、第8条において、行政機関の長は、「保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない」ことを規定している。


他方、1年未満保存の行政文書については、行政文書ファイル管理簿への登録の例外とされており、行政文書の作成・保存・廃棄の状況を記録する仕組がない。このような例外が設けられた趣旨は、日々発生する行政文書をことごとく登録対象とすることが行政実務を無用に煩雑にするばかりで、行政の説明責任という観点からも特に必要とされないものだからである。

しかし、この現行法の問題は、1年未満保存の行政文書の該当性を判断するのが行政機関自身であり、その定義及び要件も曖昧であるという点にある。その結果、公文書管理法の趣旨を潜脱する運用・廃棄を認める結果となっている。行政機関による恣意的な運用・廃棄がなされないようにするためには、少なくとも1年未満保存の行政文書を指定する定義及び要件を明確にする必要がある。

また、南スーダンPKO派遣部隊の日報は電子情報として残っていたことが後日、明らかになったという経緯からすると、電子情報を公文書として保管することの重要性の位置づけが明確になされていないことが問題である。秘密保護法との関係について考えると、特定秘密の指定解除後の公文書保存が適正になされるかも危惧されるところである。

電子文書については、紙情報と異なり保管場所の確保の問題は生じないから、一旦は全てをデータベース上の中間書庫(電子中間書庫)に保管して、公文書の重要度が明らかになるかどうか、一定期間見定めたうえで、アーキビスト(永久保存価値のある情報を査定する専門職)によって廃棄か保存かを決めるような文書管理の体制が早急に作られるべきである。米国では、2016年12月31日までに各連邦省庁において、永久保存及び現用の電子メール記録をアクセス可能な電子的フォーマットで管理することとされている(2011年11月28日オバマ大統領の政府記録管理に関するメモランダム)。

当連合会は、これまで情報公開法改正とあるべき公文書管理法について提言してきたが、改めて、少なくとも1年未満保存の行政文書を指定する定義及び要件を明確にすること等により、公文書の安易な廃棄を防止し、電子情報も含めた公文書の管理を徹底することを求めるものである。



  2017年(平成29年)4月28日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋