区域外避難者の選択を尊重し、住宅支援の継続を求める会長声明



福島第一原子力発電所事故後、政府が設定した避難区域外から避難した区域外避難者に対する災害救助法に基づく住宅支援(応急仮設住宅の供与)の打切りが、本年3月31日に迫っている。福島県が2015年度に行った避難者の意向調査では、「原発事故が収束していない」(41.4%)、「避難元に戻っても健康(放射能)に不安がある」(38.5%)として、被災当時の市町村に戻らないとした世帯が目立つ。多くの避難世帯が避難継続を求めている中での住宅支援の打切りは、特に家族の一部のみが避難している世帯に対して、経済的な困窮をもたらし、望まない避難元への帰還を強いる結果となりかねない。このような事態は、被災者が滞在・避難・帰還を自らの意思で行うことができるよう政府が適切に支援すると定めた原発事故子ども・被災者支援法(以下「支援法」という。)の理念に反するものと言わざるを得ない。


この間、福島県が民間賃貸住宅等の家賃への支援を決めたほか、福島県からの要請に基づき、避難先の自治体において、公営住宅に優先入居の枠を設けたり、独自の家賃や引越費用の補助を設けたりしている例もある。しかしながら、これらの援助は一時的なものであり、あくまで福島県への帰還促進を前提としているなど必ずしも避難者の選択を尊重しているとは言い難い。また、避難先によって受けられる支援施策が異なるという事態も生じている。今こそ支援法に基づき住宅の確保に関する施策を講じる責任を有する国の積極的な関与が求められているというべきである。


そこで、当連合会は、政府に対し、災害救助法に基づく支援を改め、被災者の意向や生活実態に応じて更新する制度の立法措置を講ずるよう改めて求めると同時に、政府及び福島県に対し、区域外避難者への支援を更に強化し、避難元への帰還を強いられる避難者が一人も出ないようにすることを求める。


  2017年(平成29年)3月15日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋