気候変動に関するパリ協定の早期批准と国内措置を求める会長声明

2015年12月に採択された気候変動に関するパリ協定は、京都議定書を引き継ぎ、21世紀下半期には温室効果ガスの人為的排出を実質ゼロとすることを目標とし、気温上昇を産業革命前から2℃未満に止めようとするものである。世界的に気候変動の影響が現実かつ深刻になっており、その早期発効・実施が期待されてきた。

2016年9月3日に米国及び中国が締結するなど、9月21日の国連リーダーズサミットまでに世界の排出量の約48%を占める60か国が批准書を寄託し、55か国の発効要件を超えた。EUなど12か国が2016年中の締結を約束し、更に批准の動きが広がり、11月にも発効の見通しとなっている。しかし、ここに日本は含まれていない。

当連合会は、2014年7月14日付け「IPCC第5次評価報告書を踏まえた地球温暖化防止を求める意見書」において、長期目標に向けて直線的に削減する目標を掲げるべきことを提言し、2016年4月5日付け「『地球温暖化対策計画(案)』に対する意見書」において、パリ協定採択に際して提出した日本の2030年の2013年度比26%削減(1990年度比約18%削減)との削減目標は低きに過ぎ、2030年に1990年度比で50%削減に近い水準の中期目標を掲げるべきと指摘したところである。また、これらの目標達成のために、原子力発電に依存するのではなく、世界で進められている再生可能エネルギー拡大のための諸制度及び電力システム改革の推進、キャップ・アンド・トレード型排出量取引の導入等による炭素の価格付け政策など、新たな排出削減対策の整備、実施を求めてきた。

パリ協定の発効を受けて、世界は脱化石燃料時代に向かうことになる。政府は、速やかに批准案を国会に提出し、国会はこれを承認して、パリ協定を締結してパリ協定の発効に貢献し、その実施のための政策措置の導入を急ぐべきである。



 2016年(平成28年)9月30日

日本弁護士連合会
会長 中本 和洋