試行を終え、改めて消費者庁等の移転に反対する会長声明


消費者庁及び国民生活センター(以下「消費者庁等」という。)の徳島移転の試行が、本年7月4日から29日までの間実施された。今回の試行を終えて、河野太郎前内閣府特命大臣(消費者及び食品安全)は7月29日の記者会見で、現時点ではまだ環境が整備されていないことから、3年程度をめどに周りの環境を含め見直しを行うとし、3~40人規模の職員を配置して徳島県内に「消費者行政新未来創造オフィス(仮称)」を設置することを表明した。これにより、現状では消費者庁等の中心的な業務を移転することは、事実上困難であることが明らかになった。

今回の試行においては、消費者庁の主たる業務である消費者行政の司令塔としての業務をはじめ、危機管理業務、国会対応、法執行業務自体が実施できなかったこと、国民生活センターの研修及び商品テスト業務の試行においては、研修参加者のアクセスの問題やテスト機材等に課題を残したことが明らかとなっている。これらは消費者庁等の移転は機能低下をもたらすものであるという、かねてからの当連合会の意見を裏付けるものと言わざるを得ない。

したがって、消費者庁等の移転については直ちに断念すべきであり、本年8月末に予定されている政府の「まち・ひと・しごと創生本部」の取りまとめでは、この間の試行結果を踏まえ、「3年後見直し」といったものではなく、移転しないという結論を明記すべきである。

また、「消費者行政新未来創造オフィス(仮称)」の設置は、現在の機能と体制を維持した上での追加措置として行うのであればともかく、消費者庁等の機能低下を招来するものであってはならない。そこで、当連合会は、同オフィスの設置が消費者庁等の一部機能移転につながることがないよう今後の推移を厳しく注視していく。

政府は、消費者庁、国民生活センター及び消費者委員会の地方移転問題を早期に終結させて、消費者庁が本来の業務に注力し、数々の立法課題や、高齢者の消費者被害やインターネット被害などの喫緊の課題の解決に向けて全力で取り組み、具体的成果をあげられる環境を整えるべきである。


   

 2016年(平成28年)8月17日

日本弁護士連合会
 会長 中本 和洋