「特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会」報告書取りまとめ及び消費者委員会の建議に対する会長声明


2016年(平成28年)3月、内閣府消費者委員会特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会は報告書(以下「本報告書」という。)を取りまとめ、これを受けて、同年4月12日、消費者委員会は、内閣府特命担当大臣(消費者)に、健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議(以下「本建議」という。)を行った。

本報告書は、健康食品全体に対する消費者の理解が不足していることを指摘するとともに、「いわゆる健康食品」について消費者がその有効性や安全性について過信するような表示・広告があること、特定保健用食品(以下「特保」という。)であっても消費者の誤認を招く表示・広告方法があり、消費者の著しい誤認を招く広告がなされたとして健康増進法に基づく勧告を受けた事案があったことなどの問題点を指摘している。

この状況を踏まえて、本報告書では、行政の取締りの強化、事業者・事業者団体の自主的取組、消費者への周知などの方策を示し、なかでも、①健康増進法に不実証広告規制を導入することを検討すべき、②「事実に相違する表示をし、又は人を誤認させる表示」に対して規制が及ぶよう、健康増進法第31条の「著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示」の「著しく」という文言を削除することも検討すべき、③特保について許可を受けた際に確認されている効果を越える効果を類推させる表示・広告を一切禁止することや適切な利用方法を利用者が適切に認識できるような表示・広告をすべきことを明記すべき、④健康食品の欺瞞的な広告への行政措置を強化し、有効性・安全性が担保されない「いわゆる健康食品」の淘汰を目指すべきとしている。本建議でも、これらにつき早急な対応を求める建議事項と、早急な検討及びしかるべき対応を求める建議事項として挙げており、この点は高く評価できる。

しかし、上記取組の中には当連合会が「いわゆる健康食品の表示・広告規制の在り方についての意見書」(2013年(平成25年)11月22日付け)において求めた内容も含まれてはいるものの、いわゆる健康食品の表示・広告の適正化のため、健康増進法に定める広告禁止の範囲につき、健康増進効果等には医薬品の効能効果の広告を含まないことを明記すべきであること、保健機能食品以外の食品に保健機能食品と紛らわしい名称を付したり、栄養成分の機能及び特定の保健の目的が期待できる旨の広告をしたりすることを禁止すべきこと、また、適格消費者団体の差止請求権を健康増進法に導入し、その実効性確保のために必要な措置を講じることなども求めていたところである。これらの制度も導入されるべきであり、本報告書及び本建議に挙げられた項目にとどまらない取組が必要である。

次に、本報告書は、特保制度の在り方に関して、①特保の製品情報公開の義務化、②再審査制の実効性確保のための体制整備、③1997年(平成9年)に廃止された更新制の代替として再審査要件を見直すことなどを求め、本建議でもこれらをその早急な対応などを求める建議事項として挙げている。

情報公開については機能性表示食品制度でも詳細になされているところであり、特保についても義務化すべきとしたことは評価できる。また、当連合会が「『消費者基本計画』についての意見書」(2010年(平成22年)1月21日付け)で述べているとおり、特保は、消費者にとり、一般の食品に比べて健康に良いと考えられているものだけに、より安全性が求められる。しかし、現在の制度は、10年、20年前の許可でもその後の審査が全く不要とされており、表示許可の審査で求められる水準の向上や、安全性・有効性に関する新たな知見が得られた場合などを考えると、審査を厳格にするべきである。

2015年(平成27年)4月から、食品に機能性を表示できる類似の制度として機能性表示食品制度が導入された。同制度は事業者の責任で事前に届け出ることによって科学的根拠に基づいた機能性を食品に表示できるものであり、事業者の特保取得に対する考え方が変化することが想定されるが、消費者の立場からみると必ずしも特保との区別は明確ではない。本報告書及び本建議では、それぞれの制度へのニーズや位置付けについての調査が十分になされないままに特保の在り方について検討されており、今後、更に調査検討の場を設け、議論がなされる必要がある。

以上のとおり、本報告書及び本建議において取り組むべきとされた事項については検討事項とされているものも含めて速やかに措置を講じるべきであるとともに、なお不十分な点についても議論の場を持ち、特保のみならず、機能性表示食品やいわゆる健康食品を含めた制度全体について、消費者の誤認や商品に対する過信を誘発しない、消費者の健康増進に真に資する法体制のために更に検討を進めるべきである。

 

 

2016年(平成28年)4月13日

日本弁護士連合会     

会長 中本 和洋