憲法の趣旨に反する特定秘密の取扱いを速やかに改め、会計検査院の検査に秘密保護法を適用しないことを求める会長声明

特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の適用に関し、政府は、本年2月12日に「会計検査院に対する特定秘密の提供について」との政府統一見解(以下「政府見解」という。)を発表した。

 

その中で「秘密保護法第10条に基づく特定秘密の提供は、会計検査院を含むすべての相手方について、行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限り、行われる」との解釈がなされることが明らかになった。これはすなわち、時の政府の判断で「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがない」とは言えないとされた場合に「会計検査院に対する特定秘密の提供が認められない」事態が生じることを意味する。

 

現行憲法第90条第1項は「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査する」と定め、これを受けて会計検査院法第26条は、会計検査院から検査上の必要により「帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出の求めを受け、又は質問され若しくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならない」旨規定している。会計検査院の検査は、憲法第90条を直接の根拠とし、憲法より下位の法規範によって妨げられることはないのである。

 

これに対して、政府見解は、憲法より下位の法規範である秘密保護法によって、憲法上定められた会計検査院の検査権限を制限しようというものである。このような法解釈及び運用は、我が国の最高法規である憲法に反するため、憲法第98条第1項に照らし違憲無効であることは明らかである。

 

当連合会は、秘密保護法が施行された現時点においても、同法の廃止を求めるものであるが、今回の政府見解に関しては、国民の知る権利を侵害するばかりでなく、憲法第90条及び第98条第1項の趣旨に反するものであるから、政府に対し、これを速やかに撤回して、会計検査院の検査には秘密保護法は適用されないとの憲法に適合する見解を公表することを強く求める。

 

 



2016年(平成28年)3月4日

日本弁護士連合会

会長 村 越   進