法曹養成制度改革推進会議決定に当たり、司法修習生に対する経済的支援を求める会長声明
本年6月30日、法曹養成制度改革推進会議は「法曹養成制度改革の更なる推進について」を決定した(以下「推進会議決定」という。)。推進会議決定では、司法修習生の経済的支援に関し、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、…司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」とされた。
現在、修習期間中に生活費等が必要な司法修習生に対しては、修習資金を貸与する制度(貸与制)が採られているが、この修習資金の負債に加え、大学や法科大学院における奨学金の負債を負っている者も多く、その合計額が極めて多額に上る者も少なくない。こうした重い経済的負担が法曹志望者激減の一因と指摘されており、司法試験に合格した後、貸与金の返済に対する不安等から修習を辞退する者も実際に現れている。
法曹は、社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するための人的基盤であり、このような公共的使命を担う法曹の養成は公的な資金によってなされるべきものである。法曹に広く有為な人材を募り、法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないよう、また、司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため、司法修習生に対する給付型の経済的支援策が早急に実施されるべきである。
上述したとおり、推進会議決定において、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討する旨の内容が盛り込まれたことは、司法修習生の経済的負担の軽減に向けた大きな一歩として評価することができる。
同決定においては、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するに当たり、司法修習生の実態、法曹の収入等の経済状況、合理的な財政負担の在り方等を踏まえるものとされているが、関係各機関は、何よりも、有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から、司法修習生に対する経済的支援について、直ちに前向きな検討を開始すべきである。
当連合会は、司法修習生に対する給費の実現を主張し、裁判所法の改正による修習手当の創設を求めてきたところであるが、改めて、法曹の魅力と法曹養成課程に対する信頼を取り戻すために、その実現に向け、全力を尽くす決意を表明するものである。
2015年(平成27年)7月3日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進