CV-22オスプレイの横田基地配備の中止等を求める会長声明

日米両政府は、2015年5月12日、米空軍横田基地に2017年からCV-22オスプレイを10機配備する計画を発表した。


2012年10月、米海兵隊普天間基地にMV-22オスプレイ24機が配備され、陸上自衛隊も2018年までに米側からオスプレイ17機購入することを決め、佐賀空港に配備する方針を示している。


オスプレイについては、オートローテーション機能(エンジン停止時に、機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)の欠陥や、回転翼機モードから固定翼機モードへの切替え時の不安定さ、風の影響を受けやすい操縦性等、多くの構造的欠陥のあることが専門家から指摘されている。オスプレイは開発段階から事故を繰り返しており、2006年量産体制に入った後も事故が絶えない。2012年4月にはモロッコでMV-22オスプレイが訓練中に墜落して2名が死亡し、同年6月にもCV-22がフロリダ州で訓練中に墜落して5名が負傷した。さらに、同年7月と9月には、米ノースカロライナ州の民間空港や同州の市街地にMV-22オスプレイが緊急着陸する等、その安全性には大きな疑念がある。


このため、当連合会は2012年9月7日付けで「オスプレイの普天間基地配備の中止等を求める会長声明」を発表し、「世界一危険な飛行場」と言われる普天間基地への配備の中止等を求めたが、これが省みられなかったのは極めて遺憾である。


2015年5月17日、MV-22オスプレイはハワイのオアフ島で着陸に失敗し、乗員2名が死亡し、安全性への疑念はますます現実化している。


横田基地に配備予定のCV-22オスプレイは、MV-22オスプレイと基本的構造は同じであるが、特殊作戦用に運用されるため、更に事故率が高いといわれている。


横田基地も普天間基地も住宅密集地の真中にあることから、CV-22オスプレイ配備の強行やCV-22、MV-22オスプレイの飛行訓練の実施は、日本国民の生命、身体、財産に対する重大な侵害のおそれを生じさせるものであり、人格権(13条)、財産権(29条)、平和のうちに生存する権利(前文、9条、13条等)等を保障する日本国憲法の精神に反し、到底看過できない。


また、オスプレイの訓練空域は、20県にまたがる6ルート等、全国各地に及ぶものであるが、米軍機は航空法の安全基準が除外されているため、航空法に定める最低安全高度(人口密集地300m、それ以外150m)にかかわらず、地上60mでの低空飛行訓練を行うことが予想される。オスプレイの飛行による墜落の危険や騒音・低周波、回転翼による強い下降気流等による環境破壊の危険は、東京都、沖縄県にとどまらず、全国に広がろうとしている。


ところで、この問題の根底には、米軍について、日米地位協定上、航空法の多くの条項の適用が除外される等、我が国が主体的に主権の行使を行うことが著しく制約されているという日本占領時代の考えが色濃く残る不平等かつ不合理な制度上の問題がある。上記訓練ルート等は、本来日米地位協定に基づく提供施設・区域ではないにもかかわらず、日本政府が米軍による訓練を認めざるを得ないこともその一例である。


したがって、当連合会が以前から求めているように(1976年10月9日第19回人権擁護大会決議、1995年12月22日会長談話、2002年8月23日理事会決議、2014年2月「日米地位協定に関する意見書」等)、日米地位協定の抜本的見直しを急ぐ必要がある。


よって、当連合会は、日米両政府に対し、CV-22オスプレイの横田基地への配備の中止を求めるとともに、日本政府に対し、CV-22オスプレイの配備の中止を米国政府に求めるよう要請する。そして、普天間基地に配備されたMV-22オスプレイの運用を停止することと併せて、日米地位協定を日本の領域主権が行使できるよう直ちに抜本的に見直すことを求めるものである。


 

  2015年(平成27年)6月17日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進