日米防衛協力のための指針の改定合意に抗議し、その国内法制化立法に反対する会長声明
日米安全保障協議委員会は、本年4月27日、新たな日米防衛協力のための指針(以下「新ガイドライン」という。)に合意した。この新ガイドラインは、集団的自衛権の行使容認を定めた2014年7月1日の閣議決定をうけて、1997年のガイドラインを改定したものである。
新ガイドラインは、平時から緊急事態まであらゆる状況において、「切れ目のない」緊密な日米共同の軍事的協力を具体的に合意し、宇宙及びサイバー空間にも及んで、アジア・太平洋地域及びこれを超えた全世界に及ぶ日米同盟を形成しようとするものであり、日本及び極東の平和と安全の維持に寄与することを主眼としてきた日米同盟の本質を根本的に転換するものである。
すなわち、新ガイドラインは、米国又は第三国に対する武力攻撃に対処するため、日米両国が当該武力攻撃への対処行動をとっている他国とも協力することを取り決め、集団的自衛権に関しては、自衛隊が、機雷掃海、艦船防護のための護衛作戦、敵に支援を行う船舶活動の阻止及び後方支援を行うこと等を具体的に定めている。また、これまでの「周辺事態」にとどまらず「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」への対応、及びアジア・太平洋地域を越えたグローバルな地域の平和及び安全のための対応として、自衛隊と米軍が、実行可能な限り最大限協力するとし、後方支援を行うこと等を定めている。
しかし、国の安全保障・防衛政策は、日本国憲法の前文と第9条が掲げる徹底した恒久平和主義の下になければならない。集団的自衛権の行使はもちろん、世界中に自衛隊を派遣して米軍等の戦争を後方支援し、戦争時においても機雷除去等の処理をして、自衛隊員を戦闘行為の危険に晒し、武力の行使への道を開くことは、日米安全保障条約の範囲すらも超えて、明らかに恒久平和主義に違反するものである。また、そのような武力の行使等について、憲法改正手続を潜脱して、政府間で合意することは、立憲主義の根本理念を踏みにじるものである。
しかも、新ガイドラインは、国民にはほとんど情報を知らせることのないまま、政府間で合意し、これから国会審議を始めようとする安全保障法制立法を先取りし、既成事実化しようとするものである。これは、手続的にも国民主権と民主主義に著しく背馳するものである。
当連合会は、本年2月19日に「『日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告』及びこれに基づく見直しに対する意見書」を発表し、この中間報告に基づいて「これまでの日本の安全保障政策を根本的に転換するような見直しをすることは、恒久平和主義及び立憲主義に違反し、国民主権原理をないがしろにするものであり、行うべきでない」とした。新ガイドラインは、中間報告の具体化として、この批判がそのまま妥当する。
当連合会は、日米防衛協力のための指針の改定合意に抗議し、新ガイドライン及びその国内法制化立法としての安全保障法制改定が、日本国憲法に違反し、我が国の平和国家としての根幹を揺るがすものとして、これに強く反対するものである。
2015年(平成27年)4月28日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進