電気通信事業法の改正案に対する会長声明

本年4月3日、政府は、電気通信事業法等の一部を改正する法律案(以下「本改正案」という。)を閣議決定した。


電気通信事業法等の改正について、これまで当連合会は、2014年11月6日付け「『ICTサービス安心・安全研究会報告書~消費者保護ルールの見直し・充実~~通信サービスの料金その他の提供条件の在り方等~』(案)に対する意見書」や本年2月19日付け「電気通信事業法改正に関する意見書」等において問題点を指摘してきた。本改正案は、いくつかの点においてこれら意見書の指摘を反映したものとなっており、その点は評価できるものの、いまだ以下の問題点がある。


第1に、初期契約解除制度の適用範囲を総務省令によっていかようにも狭めることができる点である。


本改正案が、これまで当連合会が求めてきた、初期契約解除制度を新設し、一定範囲の電気通信役務の提供を受ける契約にその適用を認めた点は評価できる。しかしながら、本改正案では、電気通信役務の提供を受ける契約のうち、契約書面の交付が義務付けられる契約にのみ初期契約解除制度が適用される構成となっているところ、契約書面の交付が義務付けられない契約類型を総務省令で定めることができるとされている。そうすると、総務省令によって契約書面の交付が義務付けられない契約類型を広く認めることにより、初期契約解除制度の適用範囲を狭めることが可能となってしまう。


この点、契約書面の交付が義務付けられない契約類型がごく例外的であることを法文上明記し、総務省令への委任を可能な限り羈束すべきである。


第2に、不実告知等の禁止に違反した場合の民事的効力が定められていない点である。


本改正案が、電気通信役務の提供を受ける条件の説明につき、不実告知等を禁止する旨の規定を設けた点及びその範囲が契約締結に至る動機の部分にまで及ぼされている点は評価できる。しかしながら、不実告知等による説明に基づいて契約が締結された場合に、利用者側が契約を取り消すことのできる旨の民事的効力に関する規定が定められていない。前記意見書等でも指摘したが、本改正案の検討過程では取消権を付与することが検討されたにもかかわらず、結局本改正案には盛り込まれていない。これでは事業者側による不実告知等を効果的に抑止することは困難である。


この点、現段階で動機等に関する不実告知等の多くのトラブルに対して有効な抑止策が存在しないのであるから、本改正案において民事的効力に関する規定を定めるべきである。



 

2015年(平成27年)4月24日

        日本弁護士連合会

        会長 村 越   進