災害弔慰金不支給決定処分取消判決に関する会長声明
本年3月13日に、盛岡地方裁判所第2民事部(小川理津子裁判長)は、岩手県の災害弔慰金等支給審査会(以下「審査会」という。)の判断を受けて陸前高田市長が行った災害弔慰金不支給決定処分を取り消す旨の判決を言い渡した。
東日本大震災に関し、審査会の判断を受けてなされた災害弔慰金不支給決定処分を取り消す判決は、仙台地裁の2014年12月9日付け判決、同じく仙台地裁の同年12月17日付け判決に続いて、3件目である。いずれの判決も、亡くなった被災者が置かれた過酷な環境や健康状態の変化等について、診療記録等により丁寧に事実を認定し、東日本大震災と死亡との間に相当因果関係があることを認めたものであり、当然の結論とも思えるものである。特に、今回の盛岡地裁の判決は、被災者のストレスを丁寧に認定し、ストレスによる急性心筋梗塞の発症リスクの高まりを考慮するとともに、一部の薬が服用されていないことがあったことについても震災によるストレスの影響を考慮するなど、被災者に寄り添い、その置かれた状態を丁寧に認定した判決であった。
当連合会は、災害弔慰金、すなわち震災関連死の審査に関し、2013年9月18日付けの「震災関連死の審査に関する意見書」において、災害により死亡した者の遺族に対する見舞い及び生活再建の支援という災害弔慰金の趣旨を十分に踏まえて、できる限り広く支給される方向で認定されるべきであること、相当因果関係についても医学的見地からの厳格な因果関係を要求すべきではなく、災害がなければその時期に死亡することはなかったと認められることで足りること等を訴え、さらに、審査会は申請の際に添付された資料に限らず積極的に資料を収集した上で審査すべきであることを指摘した。しかし、上記三つの判決の事例では、いずれも、審査会において、災害弔慰金の趣旨を十分考慮した上で積極的かつ十分な審査がなされたとは言い難く、遺族が訴訟を提起し判決の言い渡しを受けるまでに長い時間を要したことを考えると、非常に残念な事態と憂慮するものである。
東日本大震災の被害はあまりにも甚大である。各自治体の審査会の不支給決定を受けて、断念した遺族や、これから申請を検討する遺族も相当数存在すると思われる。
当連合会は、改めて、審査会の審査について、災害弔慰金の趣旨及びこれらの判決を踏まえ、審査会において積極的かつ十分な審査がなされ、できる限り広く支給される方向で認定されることを求めるものである。
2015年(平成27年)3月18日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進