東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故から4年を迎えての会長声明

本日、東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故発生から4年を迎えた。


いまだ被災地の復旧・復興は十分ではなく、原発事故による放射能汚染と相まって、今なおふるさとを追われ、避難生活を余儀なくされている人々は約23万人に及んでいる。避難生活を免れた被災者・原発事故被害者であっても、なお被害が継続し、十分な救済を受けられずにいる人々も数多い。当連合会は、復旧・復興の主体が被災者・原発事故被害者であり、復旧・復興が憲法の保障する基本的人権を回復するための「人間の復興」であるとの認識の下に、今後も被災者・原発事故被害者への支援を続けるとともに、災害救助法等の災害法制の問題点を踏まえ、以下のような「人間の復興」を見据えた中長期的な復興対策にも取り組んでいく所存である。


被災地の復旧・復興と被災者・被害者の救済に当たっては、生活基盤の確保と生活環境の整備、そして、原発事故による損害の完全な賠償が重要な課題であると考えられる。そうした観点から、とりわけ次の各課題について実現を求めていく。


第一に、仮設住宅の制度の改善を含む住宅支援制度である。多くの仮設住宅は、1年更新かつ原則転居不可という制約の下で運用され、来年3月末に期限を迎える住宅も多い。高台移転や災害公営住宅についても、完了までになお相当の日時を要する見込みである。こうした問題を解決するためには、災害救助法に基づく住宅対策を見直し、まちづくりの視点を含む被災者の自立支援に向けた住宅政策への転換が求められる。少なくとも仮設住宅の供与期限を速やかに相当期間長期化させるべきである。


また、汚染水問題や除染による汚染土壌の仮置き、除染自体も途上にあることなどの環境上の問題がある中で、個々の世帯の実情を尊重し、帰還と転居の選択を含む柔軟な住宅支援制度が必要である。


第二に、既に約3200人に及ぶ震災関連死の問題である。進まぬ住宅再建及び環境整備の状況を反映するかのように、災害弔慰金における震災関連死の認定者数が増え続けているが、自治体ごとの認定格差の問題は解消されず、各地で訴訟が提起されている。震災関連死を防止していくためにも、震災関連死の原因を調査の上、認定方法や認定基準が見直されるべきである。


第三に、福島第一原発事故に関連した住民の健康確保である。住民に対する体系だった健康診断はこれまで福島県内でしか行われておらず、その中でも、詳細な健康診断は避難区域からの避難者のみである。健康診断についてはその対象を広げた上、健康への影響調査を注意深く、網羅的かつ継続的に行うべきである。


第四に、個人及び事業者の原発事故による損害の完全賠償の実現である。円滑、迅速、公正な損害賠償の実現のために原子力損害賠償紛争解決センター(以下「原紛センター」という。)が設けられ、集団申立ても増加している。そうした中で、東京電力株式会社は、原紛センターの和解仲介案を尊重する旨、誓約してきたにもかかわらず、昨年からこれを拒否する案件が目立っている。このような状況が続けば、原紛センターへの信頼は失われ、その存在意義が問われることとなりかねない。当連合会がかねてから提案してきたように、原紛センターの和解仲介案に片面的な拘束力を付与することを、改めて求める。


ここに挙げた問題は、東日本大震災及び福島第一原発事故の被災者・被害者が現に直面し、解決が求められている課題であり、復興がいまだ途上であることを示すものである。また、東日本大震災及び福島第一原発事故は、地震・津波及び原発震災の脅威を改めて教えるものであった。この経験は、大災害の絶えない我が国の災害対策及び原子力政策に深く反映されなければならない。当連合会は、これらの被災者・被害者の実情に思いを致し、今後とも、支援を続けていくとともに、被災者支援の経験を踏まえ、被災者・被害者支援の制度整備に向けても、さらに尽力していく所存である。

 

 

2015年(平成27年)3月11日

        日本弁護士連合会

       会長 村 越   進