個人情報保護法の改正案に対する会長声明
本日、政府は、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)の一部の改正に関する法律案(以下「本改正案」という。)を閣議決定した。
個人情報の有効利用の要請があることは否定できないとしても、プライバシーの保護にも十分な配慮が必要である。これまで当連合会は、本年2月19日付け「『パーソナルデータの利活用に関する制度改正に係る法律案の骨子(案)』に対する意見書」等において問題点を指摘してきた。
しかし、本改正案は、「パーソナルデータの利活用に関する制度改正に係る法律案の骨子(案)」(以下「骨子案」という。)から更にプライバシーの保護の観点から後退した部分があり、以下の点で問題がある。
第1に、個人識別符号の定義の問題である。
指紋データや顔認識データ、携帯電話番号、旅券番号及び運転免許証番号などは、取扱いによっては、プライバシーに重大な影響を及ぼす可能性がある。そこで、この種のデータについても個人情報保護法の規制が及ぶことを明確化しようというのが、改正における議論の焦点のひとつであった。
ところが、本改正案では、個人識別符号を、この種のデータのうち「特定の個人を識別することができるもの」と定義し、これが含まれるものを「個人情報」としたために、この種のデータに法の規制が及ぶか否かが不明確であるという問題が解決されていない。つまり、これまでの議論を踏まえておらず、プライバシーの保護の観点に欠けるといわざるを得ない。
よって、指紋データや顔認識データ、携帯電話番号、旅券番号及び運転免許証番号などのデータに対しても規制が及ぶことを明確化すべきである。
第2に、匿名加工情報の作成や第三者提供の規制が緩いという問題である。
本改正案では、匿名加工情報を作成したときには当該匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目の公表を義務付けており、匿名加工情報を第三者に提供するときにも個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法について公表することを義務付けてはいる。
しかし、この程度の規制では、加工の程度が緩やかな匿名加工情報を作成して第三者に提供し、その後に再度個人を特定し直すような違法行為を監視することができない。
よって、匿名加工情報を作成する目的、情報の項目及びその提供先を本人に知らせる又は本人が容易に知り得る状態に置くという規制を設けるとともに、匿名加工情報を第三者に提供する際にも、個人情報保護委員会への届出を義務付けるべきである。
以上のとおり、当連合会は、国に対し、本改正案を見直すことを求める。
2015年(平成27年)3月10日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進