秘密保護法における国会の監視機能に関する会長声明
特定秘密の保護に関する法律(以下「本法律」という。)は2014年12月10日に施行されたが、国民の多くが不安や疑問を抱く法律であることから、国会は、国会内に監視組織を創設する必要があると判断し、衆議院及び参議院に情報監視審査会を設けることとした。
しかし、情報監視審査会が有効に機能するかについては数々の問題があり、次のとおりその問題点を指摘する。
第1に、情報監視審査会の委員は、衆議院及び参議院で各8名ずつのみで組織され、各会派の議員数に比例させるとしている(衆議院情報監視審査会規程第2条及び参議院情報監視審査会規程第2条)ため、与党及び本法律に賛成する立場の議員が委員の大多数を占めることになり、チェックの機能を果たし得ない事態も想定し得る。同審査会の委員について大幅な増員がなされるべきである。
第2に、行政機関の長が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認め」ない限り、特定秘密は提供されない(本法律第10条第1項及び国会法第102条の15)ため、この点について恣意的な運用がなされた場合、国会の監視権限は機能しないことになる。監視機能を果たすためには端緒となる内部通報を受け入れることができるようにする必要があるが、本法律にも「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」にも、国会において内部通報を受け付ける規定が設けられていない。これを認める明文の規定が設けられるべきである。
第3に、情報監視審査会が特定秘密の指定を解除すべきだと判断したとしても、なし得るのは勧告だけであり、強制力はないという点である(国会法第102条の16)。直接的な強制力はないにしても、行政機関に予算や人事上の影響力を与え得るような権限が必要である。
そして何よりも問題なのは、現在開催されている通常国会においても、未だに情報監視審査会の委員の人選等さえなされていないことである。これでは国会が行政機関の秘密指定にかかる暴走を防ぐことはできない。
国会の各会派が特定秘密の監視の強化について共通認識に立っているはずであるにもかかわらず、情報監視審査会による行政監視の強化を迅速に実行できていないのは、情報監視審査会の制度設計や監視機能について上記のような問題があり、その対応について合意に至っていないからである。
国会には、国民の知る権利に奉仕するために政府を監視し、健全な民主制を支えていく責任が課せられている。国会にこのような機能を果たさせるためには、本法律や改正国会法の抜本的な改正が必要である。
よって、当連合会は、情報監視審査会の始動に当たり、国に対し、速やかに本法律の廃止を含む抜本的な見直しを行うことを求める。
2015年(平成27年)2月13日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進