少年の実名等報道を受けての会長声明

本年2月5日発売の「週刊新潮」は、1月27日に被疑者が逮捕された愛知県名古屋市の事件について、被疑者の少年の実名を挙げ、顔写真を掲載した。

 

これは、少年時の犯行について氏名、年齢等、本人と推知することができるような記事又は写真の報道を禁止した少年法61条に反する事態であって、誠に遺憾である。


 
凶悪重大な少年事件の背景には家庭での虐待等の不適切養育や学校・地域などをめぐる複雑な要因が存在し、少年個人のみの責任に帰する厳罰主義は妥当ではなく、少年の成長支援が保障されるべきである。この点、少年法1条は「健全育成」の理念を掲げ、同法61条は、この理念に基づき、少年の更生・社会復帰を阻害することになる実名報道を、事件の重大性等に関わりなく一律に禁止している。

 

国際的に見ても、子どもの権利条約40条2項は、刑法を犯したとされる子どもに対する手続のすべての段階における子どものプライバシーの尊重を保障し、少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)8条も、少年のプライバシーの権利は、あらゆる段階で尊重されなければならず、原則として少年の特定に結びつき得るいかなる情報も公開してはならないとしている。

 

もとより、憲法21条が保障する表現の自由の重要性は改めていうまでもないが、少年の実名等が報道に不可欠な要素とはいえない。事件の背景・要因を報道することこそ、同種事件の再発を防止するために不可欠なことである。

 

当連合会は、2007年11月21日付けで少年事件の実名・顔写真報道に関する意見書を発表したほか、これまでなされた同様の報道に対し、少年法61条を遵守するよう要請してきた。それにもかかわらず、今回同じ事態が繰り返されたことは極めて遺憾である。

 

当連合会は、改めて報道機関に対し、今後同様の実名報道・写真掲載をすることのないよう要請する。

  


 

  2015年(平成27年)2月5日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進