商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

 

経済産業省及び農林水産省は、本日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた。


当連合会は、2014年(平成26年)4月5日付けで公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則に対し、同月10日付け会長声明及び同月16日付け意見書において、これに反対する意見を表明してきた。本省令は当初の公表案を若干修正し、同規則第102条の2を改正して、ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に、顧客が65歳未満で一定の年収若しくは資産を有する者である場合に、顧客の理解度を確認するなどの要件を満たした場合を例外とする規定を、不招請勧誘の禁止の例外として盛り込んだものである。


しかし、上記の要件を満たすかどうかの顧客の適合性の確認は勧誘行為の一環においてなされるものであるから、本省令は、商品先物取引契約の締結を目的とする勧誘を不招請で行うことを許容するものというほかなく、実質的に不招請勧誘を解禁するものである。すなわち、本省令は、法律の委任の範囲を超える違法なものであり、省令によって、法律の規定を骨抜きにするものと言わざるを得ない。本省令は、透明かつ公正な市場を育成し委託者保護を図るべき監督官庁の立場と相容れないものである。


さらに、委託者に年収や資産の確認の方法として申告書面を差し入れさせたり、書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法は、いずれも、現在も多くの商品先物取引業者が事実上同様の手法を採っており、その中で業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり、正答を教授するなどの行為が蔓延し、被害が生じていることからすると、これらの手法が委託者保護のために機能するものとは評価できない。


そもそも、商品先物取引法における不招請勧誘を禁止する規定は、長年、同取引による深刻な被害が発生し、度重なる行為規制強化の下でもなおトラブルが解消しなかったため、与野党一致の下、2009年(平成21年)7月に法改正の上、導入された経緯がある(2011年1月施行)。しかし、その後においても、個人顧客に対し、金の現物取引やスマートCX取引(損失限定取引)を勧誘して接点を持つや、すぐさま通常の先物取引を勧誘し、多額の損失を与える被害が少なからず発生している実情がある。


本省令はかかる立法経緯及び被害実態を軽視し、商品先物取引の不招請勧誘を事実上解禁するものであり、消費者保護の観点から許容できず、当連合会はこれに強く抗議する。


 

  2015年(平成27年)1月23日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進