参議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明
本日11月26日、最高裁判所は、2013年7月21日に施行された第23回参議院議員通常選挙(選挙区選出議員選挙)に対する選挙無効請求訴訟について、投票価値の不均衡は、2012年の法改正後も違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったが、本件選挙までの間に同規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず、憲法に違反するに至っていたということはできないとの判決を言い渡した。いわゆる違憲状態判決である。
最高裁判所は、2006年10月4日の大法廷判決において、投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の指摘を、2009年9月30日の大法廷判決においては、当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、選挙区間における投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあり、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘を行った。さらに、2012年10月17日の大法廷判決は現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じるよう指摘した。しかるに、国会は定数を「4増4減」する改正のみを適用して本件選挙を施行したために、本件選挙の当時、鳥取県の有権者が1票の選挙権を持つのに対し、北海道の有権者は僅か約0.2票分の選挙権しかないという不平等が生じていた。
本判決は、国会が違憲状態を認識し得たのは2012年大法廷判決時であり、本件選挙までの9か月間に法改正をすることは実現困難であったとしたが、鬼丸かおる裁判官及び木内道祥裁判官が反対意見において指摘するように、上記各判決に照らし、それ以前から認識し得たことは明らかである。
当連合会が「衆議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明」(2013年11月20日)で指摘したように、裁判所には、司法権の担い手としてだけでなく、憲法の最後の守り手としての役割が期待されている。違憲審査権を行使して、立憲主義、法の支配を貫徹させていくのは裁判所の役目である。特に本件のように、民意を反映すべき民主主義の過程そのものが歪んでしまっている場合にこれを正すことは、裁判所以外にはなし得ない。しかるに、本判決は、国会の怠慢を容認し、民主主義の過程そのものの歪みを延長させるものであって、裁判所が果たすべき職責に照らし不十分なものと言わざるを得ない。
当連合会は、これまで、投票価値の平等を実現するよう、国に対して一貫して求めてきた。本判決も、2012年改正法附則第3項に従い2016年に施行される通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しが行われることを前提とするものである。当連合会は、重ねて、直ちに公職選挙法を改正するよう求める。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進